20091006_01

埼玉県の秩父市に、年に一度轟音が響き、煙が空にたなびく日がある。ロケット祭りと称される、龍勢祭りが行われているのだ。この祭りは秩父市の吉田にある椋神社の大祭に奉納する神事として、10月の第二日曜日に行われている。

「ドン!」「ドン!」と低い音が大地を揺らす。空に打ち上げられた通称「農民ロケット」は300〜500メートル上空まで昇りつめ、落下と同時にさまざまな仕掛けで観客を沸かせる。このロケットは手作りで作られており、代々受け継がれているもの。火薬の取り扱いや、内部の構造などを父親・祖父世代から学んだ、若い世代が作り上げるのだ。ロケットがやぐらにかけられて、打ち上げられるその様子が、龍が天へと昇る様に見えることから龍勢と呼ばれているとのこと。

龍勢の歴史は古く、1600年の関が原の合戦にて、戦況を知らせるために使用されたのろしがそのルーツであるとされている。当時は連絡手段としてであったが、その後改良され龍勢となり、農村の神事や祭礼に用いられるようになったらしい。

この龍勢には現在27の流派があり、それぞれが趣向を凝らした龍勢を製作する。祭りで打ち上げられる龍勢は約30数本。打ち上げの様子を、作り手のみならず観客も固唾を呑んで見守っている。

祭りが始まり、打ち上げる順番が回ってくると、若い衆はこの1年間の集大成ともいえる龍勢を担ぎ、やぐらまでを練り歩く。やぐらは高さ20メートルで、龍勢を慎重にセットし方角を調整すると、やぐらの上から口上が行われる。「東西、トーザイー、ここに掛け置く龍の次第は〜、…(中略)…これを椋神社にご奉納〜。」と幣束を振りながら述べ、やぐらに龍勢を残し地上へ戻る。

点火されるやいなや轟音が響き、遥か上空へと昇っていく龍勢。発射が成功し、場内は拍手喝さいだ。昇りきった龍勢は、落下とともに流派ごとに特色のある仕掛けを披露する。花火をあげるもの、色とりどりの煙をあげるもの…落下傘に吊られて、弧を描きながらゆっくりと落下する様はもはや芸術だ。

しかし成功するものばかりではない。火薬のかたさや微妙な隙間によって、龍勢はきれいに打ちあがることなく木っ端微塵に破裂したり、またはうまく上昇しなかったりする。それだけに、その絶妙な職人技と、成功したときの会場の一体感には感動を覚えざるをえないだろう。

秩父観光協会 龍勢祭り
http://www.ryusei.biz/festival/ryu01.html

(Written by 澁澤すい)

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