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車で道路を走っていると前方で工事が行われている。渋滞でイライラするのか、スムーズな流れで気にも留めないのか、その時その時で感じるものは違うだろう。だが、ふと作業現場の先頭で旗を振っている作業員の姿が目に入り、少し気持ちが切り替わる。そうだ、安全運転をしなければ。しかし近付いてよくよく見ればそれは人形で、車はその脇を通って作業区間を抜け、また通常の運転へと戻っていく。車を運転していれば、誰にでもそんな経験はあるだろう。
そう、彼はそこにいる。その休むことなく旗を振り続ける彼の名はズバリ「安全太郎」。人の代わりに作業の先頭に立って旗や回転灯、光る棒等を振って、作業現場のスムーズな交通を支えているのだ。

20091124_02安全太郎の誕生は、昭和45年にさかのぼる。時は折しも東名自動車道開通直後、この日本の大動脈では各地で頻繁に作業が行われていた。当時はまだ馴染みのない高速道路、当然のごとく、車に作業員がはねられるという事故も頻発してしまう。そこでその対策として開発されて登場したのが、この安全太郎だったのだ。そのリアルな造型は、運転手達をハッとさせ、冷や汗と共に安全運転の気持ちを思い出させてくれるだろう。

そんな安全太郎を製造し続けているのは、愛知県名古屋市にあるトクデンコスモ株式会社。安全太郎の現在の特許を持っている会社だ。その胴体や腕のパーツなどは量産されているが、顔は一つ一つが手作りでメイクを施され、安全太郎たちは一体一体が別の個性を持っているのである。
不景気もあって新規の生産受注こそ減っているものの、今でも修理の依頼は絶えず、パーツを入れ替え塗装もされて、新品同様になった安全太郎達が各地の現場へと帰っていく。中にはもう二十年以上現場に立ち続けている安全太郎もいるという。まさに、安全太郎が培ってきた信頼と実績の証明といえる話ではないか。

最近はLEDの電光掲示板も増えてきたが、それはそれ、やはり人間の形をした物は気持ちが違う。そんなわけで、安全太郎達は今日もどこかの作業現場で旗を振り続けているのだ。

トクデンコスモ株式会社
名古屋市港区神宮寺2丁目1611番地
TEL:052-382-6711

(Written by 青山鉄平)

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