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「水剤を扱うとき、ラベルは常に上を向けろ」
これは薬剤師といわず、化学系の人なら無意識に行っているかもしれない癖。醤油やらソースでもついその癖が出てしまう。かける前にくるくる回している人は、およそ化学系の人間かソムリエくらいだろう。

20091202_02ソムリエはワインラベルを客に見せるために上に回すのだが、薬剤師がこれをやるのには薬剤師なりの理由がある。入れる試薬に間違いがないか目視しながら調剤・実験するという理由もあるがそれだけではない。その試薬が垂れたときに、ラベルにかからないようにするためということが最大の理由だ。

ソースやワインがかかったところでラベルが汚れる程度で済むが、これが試薬だと大問題で、どこでなにと化学反応を起こすかわからない。紙を変色させたり、焼いてしまったりするものもある。ラベルが焼けたら、その瓶にはなにが入っているかわからない。すぐに拭けばいいじゃんと思うかもしれない。拭いて取れるものならいいが、取れないものも多い(紙に油を染みこませたものを想像してみよう)。そして、その場ではなんともなかったのに、長期的に化学変化を起こしてしまうものもないとは言い切れない。次に使うとき、その試薬のかかったラベルに触ってしまうかもしれない。その手で別のものを触ってしまったら……。ちょっと考えただけでこんな可能性がさらさらと出てくるのだから、ラベルに試薬がかからないようにするにこしたことはないのだ。

同じ理由で、マニキュアなどは化学反応を起こすからつけてはいけない(調剤だと衛生面の理由も大きいけど)。実験室での靴は、試薬がかかってしまったときにすぐ脱げるように、サンダルなどを推奨している。

今までの薬学部は「研究室」が主体だったので、こんな性質を自然に身につけてきていたが、臨床主体の六年制に移行しているせいか、近頃は実験をやらなくても薬剤師になれるようだ。今後、ソースのラベルを上に回す癖のない薬剤師が多くなるかもしれない。

(Written by 富野浩充)

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