病院や薬局で働いている薬剤師に欠かせないアイテムといったら、なにを思い浮かべるだろう。白衣、乳鉢、スパーテル(薬さじ)、ボールペン、などなど。だが、それよりも、もっと欠かせない、そして、替えの効かないアイテムがある。「輪ゴム」だ。
病院内で最も輪ゴムを消費している部署は薬局で間違いないだろう。なにしろ、調剤した薬は必ずまとめて輪ゴムで留めている。点滴に入れるアンプルを留めるのも輪ゴム、湿布が複数処方されたときにバラバラにならないようにするのも輪ゴムだ。
輪ゴムにもサイズがある。一般に最もよく使う16号(直径60mm)が薬局でもスタンダードだが、中には8号(25mm)もおいている薬局がある。16号だと、ほとんどの薬で二重にしないと留まらないが、8号なら一重のままで固定できる。手首には16号、指には8号の輪ゴムを蓄え、次から次へと調剤する。薬剤師が昼食のときに手首に輪ゴムを装備している、なんていうのはよくあることで、帰宅したあとにその存在に気付くこともしばしばある。3時間も調剤をしていれば、右手はゴムの臭い。湯水のごとく輪ゴムを消費し、飛ばし、床に撒き散らす。そう、現代の薬剤師は輪ゴムなしでは調剤できない身体になってしまったのだ。
ちなみにこの輪ゴム、日本では大正後期より使われ始めた。自転車のチューブを薄く切り、輪ゴムとして生産したのが国内での始まりで、札束をまとめるのに採用したという。
ちょっと調べてみたら、輪ゴム100gで300円前後。調剤現場でよく見かける500gの紙袋は1000円前後の値段だ。遊びで飛ばすのも自重しなければ。
(Written by 富野浩充)
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