わずかコイン数枚で身も心もほどける究極のリラクゼーション空間、それが銭湯だ。
広い浴槽でたっぷりのお湯につかり、ぐーんと手足を伸ばせば、日頃の疲れが一気に吹っ飛ぶ。それはまさに「羽を伸ばした」ような心地よさ。
羽を伸ばせる銭湯と言えば、ここに勝る店はないだろう。京都の円町エリアにある「松葉湯」では浴室に、なんとインコを100羽近く飼っているのだ!
広い浴槽でたっぷりのお湯につかり、ぐーんと手足を伸ばせば、日頃の疲れが一気に吹っ飛ぶ。それはまさに「羽を伸ばした」ような心地よさ。
羽を伸ばせる銭湯と言えば、ここに勝る店はないだろう。京都の円町エリアにある「松葉湯」では浴室に、なんとインコを100羽近く飼っているのだ!
浴槽と並び、ガラスで仕切られたスペースがある。一見サウナルームのようだが、ここがインコのお部屋。木々に留まったり、巣箱で休んだり、めいめいが羽を伸ばし放題(鳥だから当たり前だが)リラックスしている。
インコたちのさえずりや愛らしいしぐさを見ながらの入泉は、まるで森林浴。街なかにいながらジャングル気分。インコたちとともに、人間もいっそう心がやすらぐというわけだ。
明治時代に創業し、ゆうに100年の歴史をたたえる松葉湯。インコを飼いだして25年目になるとのこと。
しかし、そもそもはこういったバードウオッチング銭湯にするつもりはなかったのだそう。三代目店主・松井宗六(そうろく)さん(58歳)曰く、
「あの部屋はもともとは、お客さんに観葉植物を見ていただくための中庭やったんです。私の家でインコを3羽飼うてましてね。ある日の開店前に鳥籠を掃除しているあいだ、あのガラス部屋に放しておいたんですわ。そしたらインコらがえらい喜びましてね。籠にもう戻りませんねん。そうしてるうちにお店を開ける時間になってしもうて。子どもたちが『おっちゃん、鳥がおる! 鳥がおる!』言うて大はしゃぎでね。そないにみな喜んでくれはるんやったら、いっそあそこで飼おうか〜、いうことになりましてん」
そうしていつしか「あの銭湯にはインコがいる」との噂に羽が生え、ほうぼうから「引越ししてうちでインコを飼えなくなったので引きとってほしい。ここならまた会いにこれるから」「赤ちゃんが産まれたので部屋で飼えなくなった。ここで育ててくれないだろうか」との依頼が殺到。インコの孤児院のごとき様相を呈し始めた。なかにはくちばしに赤マジックで色を塗り「うちの子」の目印をつけて会いに来るお客さんもいたという。人のいい松井さんはどうぞどうぞと引き受け、多い時には160羽にまで膨れあがった。
「お客さんもインコを眺めているうちに、情が湧いてきますんやろなぁ。『今日はあの子を見かけんけど、あんた焼き鳥にして食うたんちゃうか?』なんて言いはりますねん。いまやもう誰も松葉湯とは呼んでくれません。“インコ湯”とか“鳥の風呂屋”とか、そんなふうに呼ばれます。このあいだなんて、どっから聞きはったのか、電話で『鳥の湯さんですか?』やて(笑)」
困ったように笑う松井さん。実際インコの世話はたいへんだ。銭湯という場所柄、掃除には特に念を入れる。生き物を飼っている以上、定休日とて実際は休めない。早朝まずすることはインコ部屋の清掃と健康状態の確認。ほかの銭湯ならば、しなくていい仕事だ。が、ヒナがかえったときは、インコを飼っていて本当によかった思うという。
「今日は表に出ているインコが少ないんです。いまは抱卵のため巣箱にいる親鳥が多いから。もうインコたちも3代目。いまおるのは、みんな若手ですわ。私と同じ(笑)。今朝も初めて見るヒナが巣箱からひょこっと顔を出してましてね。手のひらに乗せて『はじめまして。これからもよろしゅうに』って声をかけたら、ぺこっと頭をさげよったんです。言葉がわかるんですかね。ほんま、かわいらしいですわ」
そう言って、孫の話をするように目を細めた。
むろんインコのみならず、肝心のお湯の評価もすこぶる高い。名水が流れる地下水脈から汲み上げた井戸水を薪で焚き、やわらかまろみのある肌に刺さらないお湯にしあげている。京都の水のよさをぜひ堪能してほしい。
ふと下方に目をやると、なんと大きな亀が!
体長60センチにも及ぶケヅメリクガメの「亀太郎」くん。現在は冬眠中だが、暖かい季節になると駐車場で散歩をさせることも。この亀太郎くんも、引き取り手を探していた飼い主から譲り受け、ここにやってきた。
「亀太郎はね、四年前まで“亀子”やったんです」
は? どういうこと?
「飼い始めて18年経ちますが、ずっとメスやと思うてたんですわ。ある日ひっくり返してみると、まぁ立派な、私なんか太刀打ちでけへんお宝がついてましてね。『あ、お前、オスやったんか〜』と。それで亀太郎に改名しましてん」
なんとまぁ、のどかきわまりないエピソード。
松井さんのお人柄が、すでにイイ湯加減なのであった。
「松葉湯」
〒602-8354
京都市下京区下立売通御前東入西東町356
TEL:075−841−4696
営業:PM15:00〜00:00
定休日:日曜日
(Written by 吉村智樹)
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明治時代に創業し、ゆうに100年の歴史をたたえる松葉湯。インコを飼いだして25年目になるとのこと。
しかし、そもそもはこういったバードウオッチング銭湯にするつもりはなかったのだそう。三代目店主・松井宗六(そうろく)さん(58歳)曰く、
「あの部屋はもともとは、お客さんに観葉植物を見ていただくための中庭やったんです。私の家でインコを3羽飼うてましてね。ある日の開店前に鳥籠を掃除しているあいだ、あのガラス部屋に放しておいたんですわ。そしたらインコらがえらい喜びましてね。籠にもう戻りませんねん。そうしてるうちにお店を開ける時間になってしもうて。子どもたちが『おっちゃん、鳥がおる! 鳥がおる!』言うて大はしゃぎでね。そないにみな喜んでくれはるんやったら、いっそあそこで飼おうか〜、いうことになりましてん」
そうしていつしか「あの銭湯にはインコがいる」との噂に羽が生え、ほうぼうから「引越ししてうちでインコを飼えなくなったので引きとってほしい。ここならまた会いにこれるから」「赤ちゃんが産まれたので部屋で飼えなくなった。ここで育ててくれないだろうか」との依頼が殺到。インコの孤児院のごとき様相を呈し始めた。なかにはくちばしに赤マジックで色を塗り「うちの子」の目印をつけて会いに来るお客さんもいたという。人のいい松井さんはどうぞどうぞと引き受け、多い時には160羽にまで膨れあがった。
「お客さんもインコを眺めているうちに、情が湧いてきますんやろなぁ。『今日はあの子を見かけんけど、あんた焼き鳥にして食うたんちゃうか?』なんて言いはりますねん。いまやもう誰も松葉湯とは呼んでくれません。“インコ湯”とか“鳥の風呂屋”とか、そんなふうに呼ばれます。このあいだなんて、どっから聞きはったのか、電話で『鳥の湯さんですか?』やて(笑)」
困ったように笑う松井さん。実際インコの世話はたいへんだ。銭湯という場所柄、掃除には特に念を入れる。生き物を飼っている以上、定休日とて実際は休めない。早朝まずすることはインコ部屋の清掃と健康状態の確認。ほかの銭湯ならば、しなくていい仕事だ。が、ヒナがかえったときは、インコを飼っていて本当によかった思うという。
「今日は表に出ているインコが少ないんです。いまは抱卵のため巣箱にいる親鳥が多いから。もうインコたちも3代目。いまおるのは、みんな若手ですわ。私と同じ(笑)。今朝も初めて見るヒナが巣箱からひょこっと顔を出してましてね。手のひらに乗せて『はじめまして。これからもよろしゅうに』って声をかけたら、ぺこっと頭をさげよったんです。言葉がわかるんですかね。ほんま、かわいらしいですわ」
そう言って、孫の話をするように目を細めた。
むろんインコのみならず、肝心のお湯の評価もすこぶる高い。名水が流れる地下水脈から汲み上げた井戸水を薪で焚き、やわらかまろみのある肌に刺さらないお湯にしあげている。京都の水のよさをぜひ堪能してほしい。
ふと下方に目をやると、なんと大きな亀が!
体長60センチにも及ぶケヅメリクガメの「亀太郎」くん。現在は冬眠中だが、暖かい季節になると駐車場で散歩をさせることも。この亀太郎くんも、引き取り手を探していた飼い主から譲り受け、ここにやってきた。
「亀太郎はね、四年前まで“亀子”やったんです」
は? どういうこと?
「飼い始めて18年経ちますが、ずっとメスやと思うてたんですわ。ある日ひっくり返してみると、まぁ立派な、私なんか太刀打ちでけへんお宝がついてましてね。『あ、お前、オスやったんか〜』と。それで亀太郎に改名しましてん」
なんとまぁ、のどかきわまりないエピソード。
松井さんのお人柄が、すでにイイ湯加減なのであった。
「松葉湯」
〒602-8354
京都市下京区下立売通御前東入西東町356
TEL:075−841−4696
営業:PM15:00〜00:00
定休日:日曜日
(Written by 吉村智樹)
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