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神戸市灘区の「六甲」(ろっこう)といえば関西指折りの、憧れの高級住宅地。
阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」でも知られるこのエリアは、六甲山の斜面に居住区が広がり、目を丸くするほどの豪邸、お屋敷がズラリと建ち並んでいる。
明治時代には外国人が六甲山に移り住み、日本初のゴルフ場を開いた。
日本の近代化の幕開けとなった街でもある。

そしてこの辺りは、水質がよいことでもとみに有名だ。
六甲の清澄な雪どけ水が地下のいたるところに流れている。
「六甲のおいしい水」、飲んだことがある方はきっと多いだろう。
六甲山を見あげる灘区は、灘の生一本でお馴染み、全国に名を馳せる酒蔵地帯。
それは名水の地である証しなのだ。

とにかく、うれしくなるほど水が豊富。
暗渠に流れていた地下水がふもとの住宅地の地表に姿をあらわし、海に向かって街なかをごうごうと音をたててくだってゆくさまは壮観!
めったにお目にかかれない好景だ。

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そんなハイソサエティーかつクリアウオーターシティである六甲に、おおよそふさわしくない名前の川が流れているのをご存知だろうか?

その名も、

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「貧乏川」!

おもわず「♪あぁあ〜、質の流れのように〜」なんてショボい替え歌をうたいたくなる。

貧乏川という名前だけでもタダごとじゃないのに、ご丁寧に、石に名前が刻まれた標識まで立てられている。
立てたのは神戸市。
つまり単なる愛称ではなく、公共性の見地から重要と考えられ、法的にちゃんと正式な名前がついた川なのだ。

ではいったいなぜ、関西きっての高級住宅地を流れる川に、こんなプアな名前がつけられたのか?

理由は、「さだかではない」とのこと。
唯一「いまでこそ高級住宅地だが、江戸時代は農作物が穫れなかったから」という説が有力。
確かに標識をよく見ると「終点」とある。
起点は山の中にあり、ちょろちょろとかすかに水が湧いては地面に吸収されてゆく。
水が豊富な六甲だが、地下水を汲みあげることができなかった江戸時代は、意外と使いづらい土壌だったのかも。

地元からは川の名前を改めるよう陳情もあったそうだが「地表に現れているのは“貧乏(川)の終点”だから、むしろ縁起がいい」とされ、そのまま残っているんだそうだ。
これはさすがにちょっと「都市伝説じゃないか?」という気が……。

とはいえ、ここが貧乏の終点であることは間違いない。
未曾有の大不況と呼ばれる昨今だが、いやなことはみんな、ここで水に流してしまおうではないか。

「貧乏川」
兵庫県神戸市灘区を南北に貫流する杣谷川(そまだにがわ)の支流。
阪急電鉄神戸線「六甲」駅からバス。
バス停「護国神社前」で下車し、西へ徒歩すぐ。
「中島橋」という橋の下に標識。

(Written by 吉村智樹)

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