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人は誰でもいつかはあの世へ行くけれど、ほとんどの人は「その日」を前もって選ぶことはできない。遺された人たちも何の心構えも準備もないまま、業者主導で葬儀が行われる・・・と言う現実。しかも葬儀費用の全国平均は230万円ほどなのに、多くの人がすすめられるのは、装飾もない5万円ほどの棺。桐製のものが主流だが最近では段ボール製や発泡スチロール製も「エコ」を理由に登場しているのだとか・・・。

この葬儀事情を教えてくれたのは、鹿児島市の株式会社アリマツ。『アリマツ』はそんな現状に疑問を抱き、おくられる自分もおくる遺族にも、“人としての尊厳”を保たせたいと願い、日本初の伝統工芸装飾蒔絵棺「おくりひつぎ」を提案している。

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同店を訪れると、陳列しているのはまさしく棺。しかし「棺」と言われなければ高級蒔絵の家具、あるいはお仏壇?とも思えるほど、美しくて品格さえ漂わせている。それもそのはず、ここで扱う棺はすべて鹿児島県の伝統的工芸品である『川辺仏壇』の職人たちによる手作り。棺の五面にはやはり川辺仏壇にも用いられる技法“蒔絵”で天女や蓮、鳳凰が描かれている。

『アリマツ』の代表取締役・有薗さんは平成16年頃から現在の葬儀事情に疑問を持ち、また棺の多くが中国や東南アジアからの輸入品であることを知り、「送られる時の最後の住まいは自分の好きなものを」と思い自分専用の棺を作ろうと奔走。有薗さんの思いは川辺仏壇職人を動かすことになり、現在のような美しい棺「おくりひつぎ」が誕生した。有薗さんの友人を中心に棺は口コミで広がり、生前は着物などを収納する“ながもち”として利用する人や、なかには実際にこの棺で旅立った方もいるという。
また出棺の際に棺を担ぐことにも気を配り、棺の底には6箇所のくぼみもつけられている。真っ白な手袋をつけた遺族や友人たちに担がれ運ばれる様子は、荘厳かつ最後の旅立ちにふさわしい光景で、後々の供養の席でも話題にのぼるほど、印象的な葬儀になるという。

棺単品での購入なら52万5000円〜。生前はもちろん、葬儀の際はそのまま祭壇としても使える専用の棺台も別売りで用意されている。どうせ焼いてしまうものになぜそんなに高価なものを、と思う人もいるかも知れないが、「葬儀費用から逆算して『これくらいの棺でいいでしょう』と業者に格付けされるのは悲しい」「自分の最後は自分で決めたい」と考える人たちには大きな反響を呼んでいる。
生前葬や遺影、戒名、骨壺、お墓など自分の「死」に関わることを生前に考え準備しておく人が増えている今、「おくりひつぎ」は新たな葬儀スタイルの提案のひとつだ。

(Written by おばらけいこ)

株式会社 アリマツ
鹿児島市鴨池1丁目41-15
TEL:099-255-6020


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