以前、「Nicheee!」でも紹介させて頂き、大盛況のうちに幕を閉じた、吉野美奈子さんの作品展「光のシンフォニー」。
遅くなってしまいましたが、展示作品やトークショーの模様を紹介させて頂きます!
■まずはギャラリー内の様子から
真ん中に見えるのが、アラバスターという天然石をつかった彫刻「エンブレース(抱擁)」シリーズ。命の抱擁が表現されており、ギャラリー内に入ると愛に包み込まれているような感覚を覚える、温かい作品です。ここに見える二つの絵画「アリア」シリーズは、2008年に吉野さんのお母様が癌だと判明した時に作成された作品。右側に見えるのが自分と母親を表したという、「アリア−愛」。左が「アリア−救い」になります。病魔から救いたいーという強い気持ちと、愛し合い生きる事の美しさを感じる、痛く、そして優しさに満ち溢れた作品は鳥肌ものでした。
■レセプション コンサート&ダンス
今回展示された作品の半分以上をこの曲を聴きながら制作したという楽曲「ル・シェル・ブルー(青い空)」は、とにかく美しいの一言。
当日、飛び入りで友情出演されたSINSKEさんの演奏するマリンバとピアノの音色が会場に響き合っていました。
宇宙のような『MINAKO BLUE』の作品に囲まれながら披露されたダンスは、まさに命の光のように輝いていました。
この日3人が着用していた衣装は、トルコ出身のドレスデザイナー、セルマ・カラカお手製のスパイラルドレス。中でも吉野さんのドレスはこの個展のためのカスタムメイドだとか。
セルマ・カラカ(selmakaraca デザイナー)
http://www.selmakaraca.com
撮影 松井みさき
http://misakimatsui.com
■トークショー NYアーティスト対談
トークショーひとつ目は、レセプションのピアノ演奏で観客を魅了していた、松村牧亜さん(NY在住作曲家・ピアニスト)×吉野美奈子さんの対談。テーマはNYアートライフでした。
NYで行われた吉野さんの展覧会をきっかけに出会ったお二人。今ではNY,ブルックリンの工業地帯、ブッシュウィックでご近所さんとの事。その町は、“ロフト”と呼ばれる“元工場”の居住可能なビルが並んでおり、ほとんどアーティストしか住んでいないエリアなのだとか。
−− NYでアーティストとして暮らし続けている理由は?
松村さん:もともと、NYの大学院を卒業したら日本に帰ろうと考えていたんです。それが、卒業直前のある日、学校のエレベーターでたまたま立ち話をした人が、ABC(アメリカ全土をカバーする大手テレビネットワークの一つ)のプロデューサーで、貰った名刺のアドレスにデモテープを送ったところ、「君の音、気に入ったから番組一本やってみる?」と、いきなり仕事を頂けることになって。そのリアクションのストレートさとスピード感にビックリしたのと同時に、この街でもっと自分の可能性を試してみたい、という思いが強くなり、結局日本には帰らず、その後13 年間、NYに住み続けています。
吉野さん:私も同じような出来事があって、、、。関わった大理石建築の修復プロジェクトで余った大理石を捨てるというので、私は「そんなの絶対もったいない!」と思って、なんとか形に残したくてその石を彫る事にしたんです。当時、私には絵画経験しかありませんでしたので、もう毎日毎日がたいへんで、完成まで一年もかかってしまいました。私としては、これが終わったらもう日本に帰ろうと卒業制作のような気持ちで取り組んでいました。ところが、完成作品を美術学校のギャラリーで展示してみると、「教会の彫刻をやらないか?」というオファーが飛び込んできました。内心では、コレ、初めて彫ったんですけど?いいんですか?という気持ちですよね。でも、その人たちは何も聞かないんです。どこでどの先生と勉強したの?何回受賞したの? なんて事は一切気にもしません。とにかく「この作品が気に入ったんだ」それだけなんですよ。
シンプルに作品で勝負できる。それがアーティストから見たNYの魅力なのだろう。
■トークショー アートとファッション
ふたつ目は、吉野さん自身がアートディレクターを勤めるファッションブランド、mottainainy(モッタイナイ・ニューヨーク)のデザイナー、ルーク・ミッケーンさんを招いて、ブランド設立秘話やこれからの時代のファッションへの考えをトーク。
NY,ブルックリンのアーティストロフトで隣のスタジオに住んでいたという吉野さんとルークさん。初めて吉野さんのスタジオに入ったルークさんは、「隣にミケランジェロが住んでいるみたいだ!」と展示されている彫刻に深い感銘を受けたのだそう。そこで、石が“もったいない”という思いから彫刻を始めた事を話すと、「モッタイナイってどういう意味??」と日本独自の表現に興味を持ち、その頃からデザイナーとして活躍していた彼は、すぐに“モッタイナイTシャツ”を作ろうと考え、そこから『mottainainy』の設立に至ったそうだ。
メンズのジーンズを中心にする等ブランドのコンセプトは、“大切に長く着て頂けるもの”というただひとつ。素材はできる限り有機栽培のものを使い、科学品を使わない加工など、細部にまでこだわっている。流通システムも、量産するのではなく、注文を受けてからカスタムメイドでお渡しする事で、無駄をはぶき、生産されたものが完売する事の少ないファッション業界に一石を投じる考えだという。“世界にひとつのもの”という芸術品と同様の考え方で、人々にアピールし、大切に着てもらえるようにつなげていきたい。と二人は語った。
“mottainai”を看板にする以上、絶対に手を抜けない。絵画や彫刻と同様、純粋に忠実に創っていきたい。と最後に話してくれた吉野さんのクリエイター魂が世界の基準を変える事、また、”モッタイナイ“精神を持った日本人アーティストが、消費の街NYで輝き続ける事を期待したい。
<左から>ルーク・ミッケーン(mottainainy 代表)
http://mottainainy.com
松村牧亜(作曲家・ピアニスト)
http://www.makiamatsumura.com
吉野美奈子(画家・彫刻家・mottainainy アートディレクター)
http://www.minakoyoshino.com
川合貴織(NYレインサマーズダンスカンパニー所属)
http://www.kiorikawai.com
SINSKE(マリンバ奏者)
http://sinske.jp
撮影 上原和江
http://kazueuehara.com
(Written by 沢岡ヒロキ)
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真ん中に見えるのが、アラバスターという天然石をつかった彫刻「エンブレース(抱擁)」シリーズ。命の抱擁が表現されており、ギャラリー内に入ると愛に包み込まれているような感覚を覚える、温かい作品です。ここに見える二つの絵画「アリア」シリーズは、2008年に吉野さんのお母様が癌だと判明した時に作成された作品。右側に見えるのが自分と母親を表したという、「アリア−愛」。左が「アリア−救い」になります。病魔から救いたいーという強い気持ちと、愛し合い生きる事の美しさを感じる、痛く、そして優しさに満ち溢れた作品は鳥肌ものでした。
■レセプション コンサート&ダンス
今回展示された作品の半分以上をこの曲を聴きながら制作したという楽曲「ル・シェル・ブルー(青い空)」は、とにかく美しいの一言。
当日、飛び入りで友情出演されたSINSKEさんの演奏するマリンバとピアノの音色が会場に響き合っていました。
宇宙のような『MINAKO BLUE』の作品に囲まれながら披露されたダンスは、まさに命の光のように輝いていました。
この日3人が着用していた衣装は、トルコ出身のドレスデザイナー、セルマ・カラカお手製のスパイラルドレス。中でも吉野さんのドレスはこの個展のためのカスタムメイドだとか。
セルマ・カラカ(selmakaraca デザイナー)
http://www.selmakaraca.com
撮影 松井みさき
http://misakimatsui.com
■トークショー NYアーティスト対談
トークショーひとつ目は、レセプションのピアノ演奏で観客を魅了していた、松村牧亜さん(NY在住作曲家・ピアニスト)×吉野美奈子さんの対談。テーマはNYアートライフでした。
NYで行われた吉野さんの展覧会をきっかけに出会ったお二人。今ではNY,ブルックリンの工業地帯、ブッシュウィックでご近所さんとの事。その町は、“ロフト”と呼ばれる“元工場”の居住可能なビルが並んでおり、ほとんどアーティストしか住んでいないエリアなのだとか。
−− NYでアーティストとして暮らし続けている理由は?
松村さん:もともと、NYの大学院を卒業したら日本に帰ろうと考えていたんです。それが、卒業直前のある日、学校のエレベーターでたまたま立ち話をした人が、ABC(アメリカ全土をカバーする大手テレビネットワークの一つ)のプロデューサーで、貰った名刺のアドレスにデモテープを送ったところ、「君の音、気に入ったから番組一本やってみる?」と、いきなり仕事を頂けることになって。そのリアクションのストレートさとスピード感にビックリしたのと同時に、この街でもっと自分の可能性を試してみたい、という思いが強くなり、結局日本には帰らず、その後13 年間、NYに住み続けています。
吉野さん:私も同じような出来事があって、、、。関わった大理石建築の修復プロジェクトで余った大理石を捨てるというので、私は「そんなの絶対もったいない!」と思って、なんとか形に残したくてその石を彫る事にしたんです。当時、私には絵画経験しかありませんでしたので、もう毎日毎日がたいへんで、完成まで一年もかかってしまいました。私としては、これが終わったらもう日本に帰ろうと卒業制作のような気持ちで取り組んでいました。ところが、完成作品を美術学校のギャラリーで展示してみると、「教会の彫刻をやらないか?」というオファーが飛び込んできました。内心では、コレ、初めて彫ったんですけど?いいんですか?という気持ちですよね。でも、その人たちは何も聞かないんです。どこでどの先生と勉強したの?何回受賞したの? なんて事は一切気にもしません。とにかく「この作品が気に入ったんだ」それだけなんですよ。
シンプルに作品で勝負できる。それがアーティストから見たNYの魅力なのだろう。
■トークショー アートとファッション
ふたつ目は、吉野さん自身がアートディレクターを勤めるファッションブランド、mottainainy(モッタイナイ・ニューヨーク)のデザイナー、ルーク・ミッケーンさんを招いて、ブランド設立秘話やこれからの時代のファッションへの考えをトーク。
NY,ブルックリンのアーティストロフトで隣のスタジオに住んでいたという吉野さんとルークさん。初めて吉野さんのスタジオに入ったルークさんは、「隣にミケランジェロが住んでいるみたいだ!」と展示されている彫刻に深い感銘を受けたのだそう。そこで、石が“もったいない”という思いから彫刻を始めた事を話すと、「モッタイナイってどういう意味??」と日本独自の表現に興味を持ち、その頃からデザイナーとして活躍していた彼は、すぐに“モッタイナイTシャツ”を作ろうと考え、そこから『mottainainy』の設立に至ったそうだ。
メンズのジーンズを中心にする等ブランドのコンセプトは、“大切に長く着て頂けるもの”というただひとつ。素材はできる限り有機栽培のものを使い、科学品を使わない加工など、細部にまでこだわっている。流通システムも、量産するのではなく、注文を受けてからカスタムメイドでお渡しする事で、無駄をはぶき、生産されたものが完売する事の少ないファッション業界に一石を投じる考えだという。“世界にひとつのもの”という芸術品と同様の考え方で、人々にアピールし、大切に着てもらえるようにつなげていきたい。と二人は語った。
“mottainai”を看板にする以上、絶対に手を抜けない。絵画や彫刻と同様、純粋に忠実に創っていきたい。と最後に話してくれた吉野さんのクリエイター魂が世界の基準を変える事、また、”モッタイナイ“精神を持った日本人アーティストが、消費の街NYで輝き続ける事を期待したい。
<左から>ルーク・ミッケーン(mottainainy 代表)
http://mottainainy.com
松村牧亜(作曲家・ピアニスト)
http://www.makiamatsumura.com
吉野美奈子(画家・彫刻家・mottainainy アートディレクター)
http://www.minakoyoshino.com
川合貴織(NYレインサマーズダンスカンパニー所属)
http://www.kiorikawai.com
SINSKE(マリンバ奏者)
http://sinske.jp
撮影 上原和江
http://kazueuehara.com
(Written by 沢岡ヒロキ)
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