20100902_01

病院の薬局で働いていると四季を感じない。1日のうちの短い通勤のときに感じる朝の気温でかろうじて季節を判断するしかない。

前回「室温」の話で触れたが、医薬品保存には温度制限がある。理科(第1分野)の授業、および家庭科の授業を思い出していただきたい。化学変化を起こすとき、熱・光・水を加えたことがあるだろう。


食品は、熱・水分・酸素・糖分などで菌が繁殖しやすくなる。冷蔵庫より室温放置のジュースは腐りやすいし、湿度の高いところに置いたパンの方が、カビも発生しやすい。
したがって、化学物質であり、口の中に入れるものである「薬」を扱うには、常に温度・光・湿度に気を配らなければならない。

そのため薬局では、一年中室温を安定させている。湿度は冬になると若干下がるが、温度は常に25度前後、湿度もめったに60%を超えない。
もちろんエアコンで調整しているが、ひとつ特徴的なのは、薬局には窓がない。

特に病院内薬局は、窓がないつくりになっているところが多い。窓があり、廊下を挟んで薬局があるパターンや、待合や診察室が壁側に並んでいて、薬局が真ん中に位置している病院、はたまた、薬の受け渡しだけは1階で行うが、薬局の本体は地下に位置している病院、窓はあるが吹き抜けで、直射日光は当たらず、その外は人が通らない造りになっている、など様々だ。
総合病院など、院内薬局のある病院に行った際には、そんなところも観察してみるとおもしろい。

窓があると、虫の侵入や結露、カビなどのおそれも大きくなるので、外気から遠ざけたほうが無難なのだ。
そんなことをわかっていなかったのか、それともただ敷地面積の関係か、調剤室に窓のある病院もあった。虫は入りやすいし、温度、湿度もコントロールしづらい。
散剤を分包したとき、白い粉にまみれたムカデが出てきたのには驚いた。

直射日光を入れないためにこのような造りにするのだが、窓がないので、働いている間は、晴れなのか雨なのか暑いのか寒いのか昼なのか夜なのか、まったくわからない。
仕事中のユニフォームも一年中同じとあっては、働いていて季節感もまったくないのだ。
いや、間違えた。われわれ薬剤師も季節を感じている。
タミフルが始まれば冬の到来を感じ、アレルギー薬の処方が増えれば春の訪れを感じる。そして現在、夏は、唯一早く帰れる季節。風邪が減り、患者が減る。とっとと切り上げて、体力温存して、冬に備えるぞー。

(Written by 富野浩充)


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