2010年10月、薬剤師界に衝撃が走った。また新しいインフルエンザ薬が登場したのだ。その名はイナビル(製造販売取得は9月10日)。
去年まで主流だったタミフル、リレンザは5日間使い切りだったが、イナビルは1日、というより、1回吸入で済むという。
つまり、診察したその場で吸入させれば、もう終わりなのだ。
去年まで主流だったタミフル、リレンザは5日間使い切りだったが、イナビルは1日、というより、1回吸入で済むという。
つまり、診察したその場で吸入させれば、もう終わりなのだ。
なぜ1回で済むのかを簡単に説明すると、イナビルが体内に取り込まれたあとに、活性代謝物というウイルスを抑える形に変わる。
これがタミフルやリレンザよりも、長く肺や気道に留まることができるというのだ。そして、臨床試験では、タミフルの5日間投与と同等の効果が確認されている。
これがタミフルやリレンザよりも、長く肺や気道に留まることができるというのだ。そして、臨床試験では、タミフルの5日間投与と同等の効果が確認されている。
そんなニュースを耳に入れた直後の感想は、「か、勘弁してくれ……」
思い返せば、インフルエンザでは毎年タミフルに振り回されてきた。
初年度では、メーカー予測を超えた処方量にドライシロップの卸在庫は欠品、それでも親が希望するのか、処方される子供があとを絶たず、大人用のカプセルを開けて、計算しやすい重さまでカサを増して、子供用の処方量をひたすら比例計算。
初年度では、メーカー予測を超えた処方量にドライシロップの卸在庫は欠品、それでも親が希望するのか、処方される子供があとを絶たず、大人用のカプセルを開けて、計算しやすい重さまでカサを増して、子供用の処方量をひたすら比例計算。
翌年になったら、ドライシロップが黄変するので、開封したら冷所保存、という通達が出た。開けてみて気づいた人が問い合わせたのだろうか。
しかし、いくら製品として大丈夫です、とメーカーが言ったところで、去年の残りと混ぜて使うわけにはいかない(去年の開封済み在庫が使用できない)。
しかし、いくら製品として大丈夫です、とメーカーが言ったところで、去年の残りと混ぜて使うわけにはいかない(去年の開封済み在庫が使用できない)。
そして、なぜかドライシロップには30gの瓶包装しかない。
2、3歳の子供ばかりならいざしらず、7歳や10歳でも体重で計算してドライシロップを処方しているのだ。
二人で一瓶使い切る、なんてざらにある(つまり量が少ない)。
次々に出る瓶のゴミ。
さらになにを思ったのか、この小瓶にセーフティーキャップ装備という完璧な密封。急いでいるのに開かない。そもそも日本の薬局では瓶のまま投薬しないので、セーフィティーキャップは必要ないのに。
セーフティーキャップ仕様は数年で改善されたが、次に問題となったのは、記憶に新しい、異常行動による転落死のニュース。
いかにもタミフルとの関連性があるような報道のされ方をしたため、処方されても「いやだ」という保護者の方たちが多数。
「飲ませない方がいいかな」と言われたり、リレンザに変更したり、処方削除したり、「じゃあどうすればいいんだ!」と怒鳴られたりもした。
2007年3月20日、厚生労働省より「原則的に10代には使用禁止」となった。10歳から19歳までは吸入のリレンザが処方されることになる。
リレンザは吸入のため、説明も煩雑だが、そもそもインフルエンザの高熱で動くのもつらい人がうまく吸入できるのか、投薬しながら疑問であった。
去年は、新型インフルエンザによってインフルエンザの罹患率も増したのか、またもやタミフル・リレンザとも大量処方がされた。
当然のように在庫確保が難しくなり、再度脱カプセルまみれの年になった。
そこに参入してくる第三勢力。しかも、1回の使用でよい。
特殊な機械のため説明が必要だが、他の薬と違って、その場で吸わせれば使用法を覚えさせる必要はない。手取り足取り吸わせてしまえばいい。
これは人気が出そうだが、正直なところ、まったく使用頻度のめどが立たないし、どの程度の流通が期待できるのか。
またメーカー欠品するんじゃないか。
医師と相談できる院内薬局ならともかく、市井の調剤薬局では、どれだけ確保するか、そもそも確保できるのか頭を悩ませていることだろう。
それによるタミフル・リレンザの在庫量もどこまで抑えればよいか、全く予測がつかない。
今冬もインフルエンザに振り回される空気が立ち込めてきた。
でも、これ、って、診察室で吸わせれば、服薬指導いらないんじゃ……。
参考動画
You Tube:[chap2]イナビル吸入容器のしくみと使い方
※トップ画像はこの動画のキャプチャー画像です。
(Written by 富野浩充)
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