2010年12月22日、こんにゃくゼリーの改善指標が発表された。職業柄、医療ニュースには日々気を向けているのだが、「こんにゃくゼリーを1センチ以下に」という記事を、食い入るように読む。

子供の器官がおよそ直径1センチなので、それ以下なら喉に詰まらないから、という理由らしい。子供でもわかる単純明快な理由だ。
 

以下にわかりやすいニュースを貼っておく。

（日テレNEWS24 - 12月22日 14:35） 子供などがのどに詰まらせる事故が相次いだこんにゃく入りゼリーについて、消費者庁の研究会は２２日、事故を防ぐために直径１センチより小さくするなどの指標をまとめた。 こんにゃく入りゼリーは、弾力があって形が崩れにくいため、小さな子供や高齢者がそのままのみ込むと、のどに詰まらせるリスクが高いとされている。そのため、消費者庁の研究会は商品を小さな子供の気管にあたる直径１センチより小さくすることや、逆にそのままのみ込めないような大きさにするなどの改善が必要だと結論づけた。 しかし、法的な規制ではないことからメーカーに対して強制力はなく、今後はいかに改善を促すことができるかがポイントとなる。

 

いろいろ突っ込みどころはあるが、薬剤師として第一に思ったことは、

錠剤は、そのおおよそが直径7〜9mmで作られているが、大きさに法的な規定はない。6mm以下のものもあれば、もちろん10mm以上のものもある。

しかし、記事を読む以上、「1センチ以上の直径があると誤嚥（ごえん※）する可能性がある、それがわかっていて対策されないまま事故を起こしたら、企業は糾弾される」という理屈なら、薬を飲み込めずに窒息したら、錠剤の大きさを変更しなかった製薬企業および、誤嚥・窒息の可能性があるとわかっていて粉砕などの対策をとらなかったとして、調剤した薬剤師にも責任が及ぶのではないか。
 

「まさか」と思っていても、意図しない要因が重なって、逮捕に繋がってしまうこともありうる。これは気をつけねばならない。

ざっと思いつく錠剤を調べてみた。
 

剤形（白色の錠剤、直径10.3mm、厚さ5.0mm）

鉄剤。貧血に使う。妊婦や腎機能の悪い人によく処方される。

剤形（白色の錠剤、直径11mm、厚さ5.3mm）

抗ウイルス薬。錠剤は大きく、10mmの穴には通らない。

剤形（白色の錠剤、直径11.0mm、厚さ5.2mm）

誰もがその商品名を知っているであろうバファリンの調剤用製品は、10mm以上の大きさだ。

剤形（うすいだいだい色の錠剤、直径10.0mm、厚さ4.7mm）

抗生物質。風邪や溶連菌感染などによく処方される。子供にも処方される可能性があるが、直径は10mmである。

剤形（白色〜微黄白色の錠剤、長径18.5mm、短径7.3mm）

帯状疱疹や水痘に使用。細長く、短径は10mmを超えていないが、長径は18.5mmと、他の錠剤と較べて、かなり大きい。こんにゃくゼリーを詰まらせるほどの老人がうまく飲み込めるか、甚だ疑問である。

剤形（白色のフィルムコーティング錠、長径15.1mm、短径6.6mm、厚さ5.3mm）

抗生物質。風邪や化膿止めなどに使用。これも細長タイプである。

剤形（淡黄色の錠剤、直径11.5mm、厚さ5.6mm）

片頭痛で使用。11mmを超えており、飲み込んだあとも、喉や食道に違和感が残ることがある大きさ。

一例として上げるつもりだったが、ずらずら出てくる。
いままでは気にも留めていなかったが、今後は、例え患者が飲めると言おうが、老人や子供に10mm以上の錠剤が処方されたら、積極的に粉砕しなければならない時代になるのかもしれない。
これも、是非「消費者庁の研究会」に見解を示してもらいたいところだ。

（Written by 富野浩充）