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ダーゼンの自主回収が決まりました。

以下ニュースより転載。
たん切り薬ダーゼン自主回収…有効性検証を断念
気管支ぜんそくのたんを切る武田薬品工業の消炎剤「ダーゼン」(一般名セラペプターゼ)に効果がないとされた問題で、同社は21日、有効性を検証する再試験の実施は難しいとして販売を打ち切り、自主回収すると発表した。
近く承認の取り消しを求める方針という。
ダーゼンは1968年に承認された医師の処方が必要な飲み薬。同社が慢性気管支炎の患者311人を対象に実施した試験で有効性が認められなかった。
同社によると、ダーゼンは病院2000か所、診療所2万1000か所、調剤薬局4万6800か所に出荷しており、年間売り上げは約67億円(2009年度決算ベース)。

(2011年2月21日11時34分  読売新聞) 
「ずっと飲んでいるのに、効かないのか」とか、「おれは効いたぞ」という考察は他のページに任せておいて、「自主回収」についての話をしてみたい。
 
この、「自主回収」という単語は、薬局業界および食品業界のニュースではちょくちょく耳にする。
異物混入やら、賦形剤(*1:編集部注)があぶない、品質保持があやしい等々、色々な理由があるが、主に、このロットの製品は危ないから取り替えますよ、というものが多い。
BSEが話題になったときは、ウシ由来の製品をサメ由来に変更したら、かえって副作用が増えて自主回収などの例もあった。

ただ、今回の「自主回収」は、「いままで使っていた薬を再試験したら効かなくなりました、この製品はもう販売しませんよ」という、ちょっとイレギュラーなケースだ。
40年以上も販売されている薬で、飲んだら効く人もいるかもしれないのに、なにをもって「効かない」というのだろう。

薬は、「プラセボ効果」を差っ引いて、その上でも効果があるといえなければ認可されない。
ただの小麦粉を「薬だよ」といって飲ませたら体調改善した、「眠れない」という患者に生理食塩水を注射したらよく眠れた、などという、いわゆる思い込み効果のことだ。

今回のダーゼンは、これを差っ引いたら、有意差が認められなかった、ということだろう。
「有意差が認められない」というのもまた、医薬業界ではよく耳にする統計用語だ。

グループをふたつに分け、グループAには効果のある薬を、グループBには偽薬(プラセボ)を飲ませて、効きの程度を統計し、明らかにグループAのほうが薬の効果があった、というとき「有意差がある」という。
逆に、AとBでたいした差が出ないとき「有意差が認められなかった」という。このようなテストは、偽薬対象でなく、新薬が出たときに、以前まで使っていた薬と比較して行うこともある。

なぜわざわざ試験をしたのか、様々な憶測が飛び交っている。
問題なのは、このあおりを受けて、関連の消炎剤が一斉に市場からなくなってしまうかもしれない、ということ。
同成分のジェネリックはもちろん、同じような目的で使われる、エンピナース、ゼオエース、レフトーゼなども、再試験→自主回収が考えられる。

というのも、2001年にも同じようなことがあったのだ。
脳循環代謝改善剤カランが「効果なし」で自主回収、その後、関連薬も自主回収される、という、同様の事象が起こっている。
いままでは「効く」といいつつ宣伝され処方されていたのに、ある日突然「やっぱ効きませんでした」といわれる。現場も患者も大混乱だ。

今回の関連薬の中には、OTC(*2:編集部注)で使われているものも含まれている。「塩化リゾチーム配合」などと謳って宣伝している薬がそうだ。
2003年に、塩酸フェニルプロパノールアミン(以下「PPA」という)が市場から姿を消したときのように、内容が変わる可能性もある。
PPAは、鼻づまりの症状緩和目的で鼻炎用製剤や風邪薬に入っていた。ところが、食欲抑制目的などでPPAを大量服用したときに、出血性脳卒中のリスクを増大させる、という結果が出て、規制が入った。
同じ製品のはずなのに、昔より鼻炎の薬が効かないな、と思っていたら、PPAが配合されなくなったせいかもしれない。

現場から反論できる症例が集まれば面白いが、回収が決まった以上、覆すのは難しいだろう。PPAに関しては自主回収ではなかったものの、すでに市場から姿を消しているため、花粉症対策によく飲んでいた身としては、なくなってしまって厳しいところがある。

今回のダーゼンに関しても、そのような患者がいないことを祈るばかりだ。

(Written by 富野浩充)

≪編集部注≫
賦形剤(*1
錠剤、散剤(粉薬)、顆粒剤などの固形製剤に、成型、増量、希釈を目的に加えられる添加剤。製剤過程で、主薬の量が少ない場合に一定の大きさや濃度にする目的で添加される。
OTC(*2)
英語の「オーバー・ザ・カウンター・ドラッグ(Over The Counter Drug)」の略で、医師の処方せんがなくても、薬局・薬店で購入できる一般用医薬品のこと。

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