前回、前々回に引き続き、薬剤師であり、漫画家でもある新井葉月さんのインタビューです。
(参考:番外編 新井葉月さんインタビュー その2)
インタビュー時、現在新井葉月さんの作品「薬屋りかちゃん(全2巻)」の主人公、りかちゃんの手書きのイラストを実際に描いていただきました。りかちゃんは、医師や看護師と違って、薬剤師は「この恰好してたら薬剤師」というイメージがないので、ただ白衣を着た人にならないよう苦労したそうです。りかちゃんを描くときは「なんとなく、薬を持たせておいたらいいかな」だったそうですよ。
インタビュー時、現在新井葉月さんの作品「薬屋りかちゃん(全2巻)」の主人公、りかちゃんの手書きのイラストを実際に描いていただきました。りかちゃんは、医師や看護師と違って、薬剤師は「この恰好してたら薬剤師」というイメージがないので、ただ白衣を着た人にならないよう苦労したそうです。りかちゃんを描くときは「なんとなく、薬を持たせておいたらいいかな」だったそうですよ。
それでは、今回は漢方について、秘めた思いをを伺いました。
■今後の漫画野望
新井 私は「自分の時間さえ確保できればそれでいい」って思ってて。最初は「2、3年勤めてから、漫画描けばいいか」と思ってたんです。でも、ウチ、残業当番はあるんですけど、基本勤務時間が9時から5時なんですよ。これなら、「大丈夫だろ」って(笑)
富野 それなら時間も取れますね。ところで次の作品は考えてないんですか?
新井 何しろ、漫画をあまり描いてないので(笑)
漢方をやってみたいとは思ってるんです。漢方ってものすごくエキスパートにやってる人たちと、ド素人たちがやってるのと、どっちかじゃないですか。「とっつきやすいテキストみたいなのが欲しいよね」って話をしてて。漫画、できないかなって。それこそ誰か原作つけて。
富野 いいですね。出たら買いますね(笑)
新井 いけるといいなあって話をしてたんですけど、なかなか難しくて。『どこかの出版社で出てた漢方の漫画』ってのを買ってみたら全然違って。これは漫画じゃなくてイラストー! 私の求めてるのはそれじゃないって感じで。もちろん文字も大事なんですけど、一緒に視覚的に訴えられるものもあればいいのになって思うんです。
富野 確かに。漫画だとスっと入ってきます。私なんか「フィンガーチップユニット」を、「りかちゃん」の第11話で覚えましたから(笑)
新井 あれはたまたま、メーカーさんがくれる冊子を見てたら「これ使える」と思って描きました。ステロイドはお母さんによっては、ホントに抵抗がある人が多くって。誰が辛いかって子供が一番辛いわけだから、その偏見をまずなんとかしないとなあと。
富野 母親の反応もまさにこの通りですよね。
新井 そうなんですよね。一生使わなきゃいけないとか、副作用が怖いとか。
富野 漫画って、抵抗なく入ってくるので、知らないうちに知識になります。
新井 そういう意味では、いい手段なんだと思います。ただ、受け皿がない(笑)
富野 個人でやるつもりとかはないですか。
新井 個人でやると、締め切りとか設定されないので、ダラダラしてしまうんです。本当は個人的に書ければいいんですけど、そこまで知識がないので。知識がないから知りたいから、誰かに原作を書いて欲しいな、っていう状況で。時々漢方の勉強会に行くと、面白いなってのはあるんですけど、継続してやらないと身に付かないんです。それこそ「りかちゃん」じゃないけど、描きながらやってたら覚えられるかなって。本を読んだり話を聞いたりするだけとは違って。今は漫画の方の野望ってそれくらいかな。
■漢方薬の使い方を知らない医師も多い
新井 ツムラが勉強会やったときに、「葛根湯の処方解説で、生薬をこれとこれと足して足して」みたいな話をぱーっと聞いたときに、あ、おもしろい、って。そういう風に、処方解説を1個1個やってくれたらいいのになって思います。だから、漢方に疎い医師が「この疾患だからこの薬」って番号書いてくると「それでいいのか」って。実際処方がおかしいんじゃないかって患者さんもいたんです。気付けなかった私たちも悪いところはあるけど、実はお薬手帳を持ってて、見てみたら、漢方だけでも5処方くらい、色んな先生からもらってたんです。
富野 なんか絶対カブってますね。
新井 あれ、甘草の量が半端ない気がする。そういうのがあったから「知らないで書く」って怖いなと。自分の身を守るためにも、そこは知っておきたいところですね。
富野 私が受けた中でも、桂枝加芍薬(けいしかしゃくやくとう)と葛根湯ってもろカブりの処方(※1)が出たことがあります。適応が全然違うから、患者も「こっちがお腹で、こっちが風邪でしょ」っていう話になってしまって。
※1 葛根湯を構成する生薬は「カッコン、ケイヒ、タイソウ、シャクヤク、マオウ、ショウキョウ、カンゾウ」の7種。風邪や肩こりに処方される。一方、桂枝加芍薬湯は「シャクヤク、カンゾウ、ケイヒ、ショウキョウ、タイソウ」の5種で、「しぶり腹、腹痛」に効能が認められている。
※1 葛根湯を構成する生薬は「カッコン、ケイヒ、タイソウ、シャクヤク、マオウ、ショウキョウ、カンゾウ」の7種。風邪や肩こりに処方される。一方、桂枝加芍薬湯は「シャクヤク、カンゾウ、ケイヒ、ショウキョウ、タイソウ」の5種で、「しぶり腹、腹痛」に効能が認められている。
新井 そう、それで「漢方は副作用がないからいいんでしょ」って患者に言われたりして、違うって(笑)
富野 漢方なめるな、って話になってくる。
新井 怖い目に合うよ、ほんとに。でも、医師でそういう考え方の人もいるんですよ。そうすると本気で出しちゃうから怖いなあって。「あのこむら返りに使うやつなんだっけ」なんて聞いてきて。きっと68番(※2)なんだろうけど。
富野 68番でしょうね(笑)
新井 そしたら、出したら出しっぱなしになりそうで。「漢方だから大丈夫だろう」って思われてると延々続くことになっちゃったりして。
富野 それは嫌ですね。これで漢方が仕分けられたらどうなるんでしょう。
新井 仕分けられてもおかしくない気はするけれど…。
※2 漢方薬にはそれぞれ番号があり、違う製薬会社の漢方薬でもほぼ統一されている。1番は葛根湯、19番は小青龍湯(しょうせいりゅうとう)、という具合。ここで言っている68番は芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を指す。
つづく
(Written by 富野浩充)
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