そんな最中の2011年5月、ヨーロッパに旅立った。行き先は、イタリアとフランス。中東ではなくヨーロッパなのだから、中東情勢の影響は受けないだろうと、実のところかなり楽観視していた。
ある日、イタリアからフランスへの国境を陸路で越えようとその国境の町 Ventimiglia (ヴェンティミリア)に列車で向かった。国境と言ってもイタリアとフランスでは「シュンゲン協定」により出入国管理が廃止されているので国境はないに等しい。
ヴェンティミリア駅に着き、次にフランスに向かう切符を買うため、列車を乗り換えるために駅舎に向かった。すると、先に滞在したジェノヴァやミラノとは一転、明らかにヨーロッパ人ではない人種が多数たむろしていた。駅舎の入口付近に座り込み、なにをするでもなく列車の利用客を“物色”しているかのような目線を感じ、物騒な空気が漂っているのは明らかだった。
その時、駅舎の前にイタリアの警察車両が入ってきた。数人の警察官が車から出てきた途端、彼らは一目散に駅から外に走り出した。そう、まるで警察から逃げ出すかのように。あれだけいた物騒な人々は一瞬で消え、イタリアにある田舎駅の雰囲気に。ただしばらくして警察が少しその場から離れると、どこからともなくまた現れてきた。
ちなみに、自分が乗り継ぐはずのニース行き列車がキャンセルになり、2時間ほどヴェンティミリア駅周辺にいた時、目の前でスリしたらしき人間を追いかける警察官たちを目撃した。そばでは、スリにあったらしき欧米人の女性が必死に何かを話していた。
駅で仲良くなった欧米人に聞いたところ「リビアやチュニジアからイタリアに流れてきて、フランス政府が国境で厳戒態勢を敷いているからここで足止めを食らっているようだ」と話していた。確かによく見ると皆、中東系の顔立ちをしていた。一刻も早く駅から脱出したい気持ちでいっぱいだったが、列車が来ないのでは仕方がない。同じく列車を待つ“仲間”がいたのは不幸中の幸いだったかもしれない。
その後、ヴェンティミリアから次のマントンという駅に着くと、ここからが正式にフランスの領土に。そして、駅にはイタリアとは比べものにならない多数の警察官がいて、ローカル列車なのに車内まで念入りに調べた後に列車がやっと出発した。
日本にいると中東情勢のニュースを見ても正直、実感があまりわかなかった。だが、イタリアやフランスでたくさん報道されていて、さらにヴェンティミリアで体験したことを合わせると、いかに大変なことが起こっているのかというのをリアルに実感させられた気がした。
(Written by Aki Shikama)
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