一時の暑さは和らいだものの残暑が続く今日この頃。家族サービスなどで、BBQ、キャンプといったアウトドアや、屋外で開催されるイベントへ足を運ぶ人もまだまだ多いのではないだろうか。
そんなとき、近年ではペットボトルの普及によって、ジュースやお茶を凍らせて携帯し、暑さをやり過ごす、という方法をとったこともあるだろう。
 
だがこれ、溶けはじめの部分が、なんか濃いなあ、と思ったことはないだろうか。もしくは、最後のほうになると、なんか水っぽいなあ、と思ったことはないだろうか。
その感覚は正しい。最後に溶ける部分は、水っぽいのだ。

溶媒には、「凝固点降下」という性質がある。これは、「不揮発性の溶質を溶媒に溶かすと溶媒の凝固点が低くなる現象のこと」をいう。
溶媒とか溶質とか、なに言ってんだ、と思われる方も多いだろう。簡単に書くと、「水に何か溶けているとき、凍り始める温度は0度以下」になるのだ。つまり、塩水やジュースは、0度以下にならないと凍らない。
さらに、凝固点降下度は、溶質の種類にかかわらず、溶質の質量モル濃度に比例する。これを今回必要な部分だけ簡単に書くと、「薄い塩水より、濃い塩水の方が、凍り始める温度は低い」となる。

さて、ジュースに話を戻そう。ジュースを凍らせるとき、100%均一な濃度を保っていれば一律に凍っていくが、なかなか難しく、大抵は、ほんのちょっと薄い部分から凍っていく。すると残りの液体部分は、元の溶液%より濃くなる。そして、次に凍っていくのは、その溶液の中でも薄い部分…、と繰り返していき、最後に凍るのは、自然と濃縮された部分になる。
溶けるときは逆だ。濃い部分のほうが低い温度で液体になる。つまり、早く溶ける部分は濃く、最後まで凍っている部分は薄く、水っぽくなるのだ。

なぜこんな話題を持ち出したのか。
先日、薬の飲ませ方、という説明冊子を見たとき、

Q.シロップを凍らせてもいいですか?
A.かまいませんが、からだを冷やすので、せきを誘発する心配もあるので気をつけて。また、種類によっては成分が変質する心配もあります。薬剤師に確認しておいてください。

いやいやいや。何も考えずに凍らせたら濃度がおかしくなるだろ、と思ったのだ。
凍らせたまま飲ませることを考えたら、1回分ずつに分けて凍らせるだろうが、冒頭のジュースと同様に、持ち歩くときに薬が温まらないように、という配慮で凍らせたのであれば、溶け出した部分の濃度がおかしくなる可能性もある。

しかし、これは、飲みづらくならないのだろうか。
氷点下ともなれば、味覚も鈍ってごまかしやすくはなるだろうが、水を飲むより氷を食べる方が時間もかかるし、それだけ口の中に留まっていることになる。
実際、患者に「凍らせてもいいか」と聞かれたことはない。薬を凍らせて服用したことがある方は、是非一報いただきたい。

「凝固点降下」について、ものすごく断片的にわかりやすく説明しています。高校の化学で習います。勉強しなおしたい方はこちら。 


(Written by 富野浩充)

(Photo by kayakaya


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