名前を聞いたことはあっても、その実態を知る人は少ない同人誌の世界。実はそんな事も常識だったのかという、知られざる同人誌業界の常識を、漫画編集者も兼ねる筆者がご紹介していこう。

業界を知らない人は意外に思うかもしれないが、実は同人作家には年収1000万円を越す者が珍しくない。
もちろん、一般商業誌同様に販売数や利益を発表しているわけではないのだが、イベントで搬入した箱の数や、並んだ客の人数(慣れてくると列の長さで、だいたい把握できる)などで総売上をほぼ把握することができる。そこから使用している印刷所の印刷代金(使っている印刷所はほぼ同じなので料金も判別可能)を引けば、おのずと販売数と利益が推測できるのだ。
「そんな推測だけでは信用できない」という方は、以下のニュースをご覧になって欲しい。

●同人誌作家、収入約2億円を隠す
『容疑者は2003〜05年までの所得が約2億円あったにもかかわらず、約2000万円と申告し所得税約6570万円を脱税』

2007年に同人誌界で起こったこの事件の記事によると、この同人作家は3年間で2億円、つまり1年で約6666万円を稼いでいたことになる。
ちなみに、この事件で話題になった同人作家と現在、同レベルと言われる『シャッター前』というサークルは、同人誌即売会の老舗『コミックマーケット(いわゆるコミケ)』では常時300ほどある。つまり少なくても300人以上が同額程度を稼いでいると考えて、まず間違いはないだろう。
 
なお、ワンランク落ちる『壁』と呼ばれるサークルになると、グッと増えて4〜5千サークルぐらいある。こちらは数も活動形態も多いため、『シャッター前』に比べると売上にバラつきがあるが、意図的に利益を出さないようにしていない限り、数百万〜数千万円を売上ていると考えていいだろう。

参考までに一般商業コミック誌の新人作家の1枚分の原稿料は、少女向け・ボーイズラブ・4コマなどが4000〜6000円、少年向け・男女ヤング向け・アダルトなどが5000〜8000円程度だ。したがって、たとえば少女向けの月刊誌で24ページの連載を持てたとしても、年収は144万〜172万8000円ぐらいにしかならない。もちろん、作品がヒットすれば同人作家など足元にも及ばない収入を得ることになるが、そこまで到達できる作家はほんの一握りだ。
したがって、編集の身としては隠しておきたいが、現状として下手な商業作家より同人作家の方がよほど稼ぎがいいと言わざるを得ないのだ。


(Written by 伊藤清美)


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