カンボジアの首都・プノンペン。この地名を堂々と掲げる、その名も『プノンペン』というそば屋が大阪・堺にある。“ラーメン通”にとって、知る人ぞ知る噂の店で「プノンペンそば」というメニュー一品しか置いていない。しかも、なぜ堺でプノンペンなのか、カンボジアなのか。数々の謎を解き明かすべく、はるばる店を訪ねてみた。
 


堺の市街地にあり、マンションや商業ビルが立ち並ぶ一角にプノンペンはあった。特に日が暮れる頃だと、赤いのれんが鮮やかでわかりやすい。そののれんをくぐると、カウンター越しに2代目店主の平野耕平さんが出迎えてくれた。

メニューは、プノンペンそば(1,000円)のみ。トッピングとして自家製ヤキブタ(700円)、また「そばなし」(850円)なども選べるが、基本プノンペンそば一本。しかも「一度食べたらやめられん味」と書いてある。カンボジアに行ったことがない身としては、いったいどんなそばなのか想像もつかなかったが、ほどなく運ばれてきたプノンペンそばを見てさらに驚いた。
 
見た目はラーメンのような、でもよく見るとまったく違うようにも感じた。鶏がらのダシ、醤油ベースのスープ。大きくぶつ切りされた焼豚、そして緑の野菜は「杓子(しゃくし)菜」だという。関西ではまったく馴染みのない杓子菜、店主が自家製で栽培しているといい、食べてみるとシャキシャキとして歯ごたえタップリ。まろやかながら唐辛子がピリッと効いていて、老若男女問わず人気なのにすぐ納得した。

その他、トマトやセロリ、にんにくなどすべて国産で提供しており、飲料水も店主自ら大阪・河内長野の岩湧山に汲みに行き、箸も奈良・吉野の下市産というこだわりようだ。

さらに、店内に「お客様へ」という張り紙で、子ども(小学校高学年以下)向けの料理を置いていないので泣いたり騒いだりは他のお客さんの迷惑になるのでご遠慮ください、と書かれてあるのを見た。プノンペンそばを最も美味しい状況で食べてもらいたいという店主の気遣いが感じられた。

さて「なぜプノンペンなのか」という謎だが、平野さん曰く、そばは初代店主が子どもの頃に堺のカンボジア屋台で食べた味を試行錯誤で再現したオリジナルという。さらに1985年にテレビでカンボジア内戦のニュースを見て「これからはカンボジアの時代だ!」と思い立ち、店名を変更して今日に至るとのこと。て現在、内戦はほぼ収束してアンコールワットなどの観光国として注目を集めつつあるカンボジア、平野さんに先見の明ありか。

エスニックだけど、どこか懐かしい味。東南アジアの香り漂う、いまや堺の名物料理となったプノンペンそばは、機会あればぜひ味わって欲しい。一度食べたら忘れられなくなること間違いなしだ。

プノンペン


(Written by Aki Shikama)


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