山中に現れる5m四方のステンレス板。豊かな自然が生い茂る山中にこのような人工物が現れたら、「これは何なんだ?」と考えない者はいない。

ここは山形県朝日町にある「空気神社」。世界でも唯一であろう空気を御神体としてまつった神社なのだ。神殿となるステンレス板には、宇宙を創る5元素といわれる「木・火・土・金・水」のモニュメントを通り抜けて辿りつく事ができる。
しかし、なぜこのような不思議な神社ができたのだろうか。

朝日町は先述の通り、豊かな自然に囲まれ、主に稲作と果樹栽培を行いながら暮らしてきた。決して楽と言える生活ではなかったが、農業をして暮らしてきた白川千代雄という老人が、「このきれいな空気のおかげで生きてこられた。空気に感謝しなくてはならない」と、空気を祀る神社の建設を提唱した。しかし、風変わりな人物だったためか、この意見が取り上げられる事はなく、昭和61年にこの世を去ってしまう。

そして翌年の平成元年、町おこしとして朝日町が、他にはない素晴らしいものを紹介できないかとなった時、空気神社の話が再度持ち上がったのだという。神社となれば行政で建設することにはいかない。民間で資金を集め建設を進める事となったが、なにせ前例のない事。住民の理解を得るには相当な苦労だったのだという。

翌年の平成2年、苦労の末、この空気神社は完成した。
 
自然と空気に感謝するこのステンレス板の本殿は、これらの理由を知らずに見てしまえば奇妙な建造物で終わってしまうのかもしれない。しかし、四季折々の風景を日頃見る事はない角度で映し込み、その姿を見せてくれるこの建造物は、そこにある「空気」の存在を十分に考えさせてくれる。
 
また、朝日町では世界環境デーに合わせ6月5日を「空気の日」に制定し、毎年6月5日とその日に近い土日に「空気まつり」が開催。御神体である空気を拝観できる本殿の一般公開や巫女の舞が披露されている。

一味違った秋の行楽の候補地の一つとしていかがだろうが?


Asahi自然観


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