未曾有の大災害を引き起こした東日本大震災から間もなく2年が過ぎた。
震災後、多くの人が防災対策の必要性を感じ、自宅や職場の防災対策に注目するようになった。
災害時に必要なものといえば、「食糧」や「水」、「灯り」などが浮かぶだろうが、常用している「医薬品」や「コンタクトレンズ」「メガネ」さらには「入れ歯」やそのケア用品の備えが非常に重要であることは見落とされがちである。
これらは他人から借りることができないものも多く、「自分自身」が常に災害に備えて置かなければならないものなのだ。
同様の災害に遭ってしまった場合、ティッシュや石鹸、ローソクなどは替わりがきく、もしくは他人から 借りることなどができるが、「コンタクトレンズ」や「メガネ」、「入れ歯」など自分用に作っているものはそういうわけにはいかない。
日常生活の中では当たり前のように使っているため意識が薄れてしまっているが、だからこそなくなると困るものがある。
また、さらに忘れがちなのがレンズや入れ歯などの「ケア用品(洗浄液/剤)」。眼や口は、ケアを怠り不衛生な状態に陥ると、からだの健康そのものに支障をきたすような病気や弊害を引き起こす。
洗浄液や洗浄剤は、市販されている防災グッズのセットの中には入っていないので、こちらもやはり自ら備えておかなければならないのだ。
「被災後、避難生活は長引くほど健康への影響が懸念される。水や食糧の問題、トイレの問題、人間関係、怖くて眠れない、など、避難生活では様々抱えるストレスばかりを意識しがちだが、意外に知られていないのが口のケア。口腔ケアは怠ると死に至る危険すらあり、避難生活で健康を守るためには絶対に忘れてはならない。」と東北大学の濱田泰三客員教授は言う。
「避難生活では、水不足などにより、歯・口・入れ歯の清掃が疎かになりがちなことに、食生活の偏りによる養失調や水分補給の不足、ストレスなどが加わり、虫歯や歯周病、口臭などが生じやすくなる。」
「そしてこうした環境で発生した細菌が、何らかのきっかけで唾液や胃液とともに肺に流れ込むと誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)などの呼吸器感染症を引き起こすリスクが高まる。
特に高齢者の場合は、体力低下も重なり、その危険は増幅する。入れ歯の場合は、少なくとも1日1回は入れ歯ケアを行い、清潔な状態に保っておくことが必要。」
また、口腔ケアは被災時には避けるべき感染症の予防にもなるという。不規則な生活は養状態の悪化し、肺炎やインフルエンザ、風邪などの呼吸系の感染症を起こしやすくなることが知られている。こういった感染症の予防のためにも、歯磨きやうがいなどの口腔ケアが欠かせない。
≪震災から2年 防災グッズを再確認しよう≫
一言で防災グッズと言っても、用途や目的別にわけておくことが必要。
例えば非常持出袋をつくって、「非常食品」 「懐中電灯」「携帯ラジオ」などすぐに必要なものをまとめて入れておけば、最小限の荷物で迅速な行動をとることができる。
準備した持出袋は、いざという時に取り出せなければ意味がないので、玄関や部屋の出入り口付近ですぐに 取り出せるようにしまっておこう。
また、地震直後の火災や倒壊に備えて。家が損傷しても後から取り出しやすい、柱に囲まれた部屋などに備蓄品を備えておくことも必要だ。
さらに、準備だけでなく、年に1回程度は非常食品の交換や、ラジオなどが機能するかといった点検を定期的に行っておくことも大切だ。
◆防災グッズとして準備しておくべきもの
《非常持出品》 両手が使えるリュックサックなどに、避難時に必要なものをまとめ、 目のつきやすい場所に置いておく。 例) 非常食品(1人3日分程度)、衣類、雨具(防寒)、履物、医薬品、 携帯ラジオ、懐中電灯、ローソク、貴重品 など
-停電に備えて … 懐中電灯、倒れにくいローソク など
-ガス停止に備えて … 簡易ガスコンロ、固形燃料 など
-断水に備えて … ポリ容器などに飲料水 *1人1日3リットル目安
-火災に備えて … 消火器、三角消火バケツ、風呂の水の汲み置き など
-避難・救出に備えて … 防水シート、のこぎり、スコップ、ハンマー、斧、大バール など
(Photo by mdid)