～セックスレス、それは夫婦間の永遠のテーマ、なのか。～「３１年目の夫婦げんか」

　ケイ（メリル・ストリープ）とアーノルド（トミー・リー・ジョーンズ）は結婚して３１年目の夫婦。子供二人も独立し、今は夫婦水入らずで同じような日々を毎日毎日飽きもせず過ごしているわけだが、妻のケイには不満があった。

ここ５年近く夫のアーノルドとご無沙汰なわけである。しかもアーノルドが腰を悪くしてから別々の部屋で寝るようになってから触れ合うこともなくなってしまったのが不満の原因らしい。

　結婚して３１年目ということはだいたい６０代前の夫婦ということにして（劇中にはっきりとした年齢は出てこない）、独身で現在彼氏のいないあたくしにとってはたかだか５年セックスしてないくらいでグダグダ言ってんじゃあないよ。しかもあんたらもういい年じゃあないか。ここで無理なんかしたらまた旦那が腰を悪くして生活にも支障をきたすかもしれないよ。とケイを叱咤するところなのだが、アメリカ人はセラピーが好きだなあ。本屋で手にした夫婦の関係を良くする啓蒙本の著者のセラピーに４０００ドル（４０万！）もかけて申し込みをしちゃうわけです。

　けっこうな時間を割いてセラピーのシーンが沢山出てくるんですが、淡々としてるんですね。直接的に、どうしたかったのか、とか、どんな妄想をするのか、とか、うへぇ、こんな質問、酔っ払ってても答えられないよ、ということをまたケイが生々しい感じで答えたりするんですね。そんな質問に躊躇しながらも答えちゃうのはセラピーマジックなのかなぁ、やっぱりアメリカ人すげーな、セラピーの先生一歩間違えたら変態っぽい顔してるのにな、とか思いながら。

　話がどんどん進んで観ていくと、メリル・ストリープのたるんだ皮膚感があたくしの母親と被ってくるんですね。メリル・ストリープ、６４歳。お母さんとあんまり変わらない年齢だ。そうなるとケイがお母さんに見えてくるんですね。１人ベッドでひっそりと泣くシーンなんかもう、こんな風にお母さんを泣かせるなんてアーノルドまじ許せねぇ、とか思ってくるんですね。もうこんな旦那ほんとどうしようもないから離婚しちゃえ！と同情的になってくるのです。あたくしは両親を投影して観られましたが、同年代の方々は心臓を掴まれるくらいに切なくなるシーンもあったんじゃないでしょうか。

　なんだかんだと一週間のセラピーを終えたケイとアーノルドはこの後どうなるのか。やっぱりセックスって夫婦（男女）にはとっても大切なコミュニケーションのツールなんだなぁ、とまるで自分がセラピーを受けたかのような、冒頭の感想とは真逆になってしまっていた自分に気付き、このあたりがこの映画の凄さなんだな、と思うわけです。

　独身のあたくしにはまだまだ関係のない問題のようですが、いつかはぶち当たるかもしれない「夫婦ってなんだろう」というシンプルな疑問が少しは解明されるかもしれません。

「３１年目の夫婦げんか」

【監督】デヴィッド・フランケル（「プラダを着た悪魔」「ビッグ・ボーイズしあわせの鳥を探して」）

2013年 7月26日（金） TOHOシネマズシャンテ、新宿シネマカリテ他全国順次ロードショー