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「ウォールフラワー」は1999年に出版された小説で、アメリカでは高校や大学の授業でも使われたりする、いわゆる「アメリカ文学」のひとつであります。
出演者はハリー・ポッターシリーズのハーマイオニーでお馴染みのエマ・ワトソン、マイケル・セラ(スコット・ピルグリムの彼)をぽっちゃりにした感じのローガン・ラーマン。そしてユダヤ版松潤ことエズラ・ミラー。
日本人にとってメジャーどころはエマ・ワトソンとプロデューサーのジョン・マルコビッチあたりくらいでしょうか。
監督はこの「ウォールフラワー」の原作者であるスティーブン・チョボスキー。
小説の原作者が監督をする。村上龍の「トパーズ」みたいなもんかー、なんて軽くナメてました。
主人公チャーリー(ローガン・ラーマン)は高校1年生。ちょっと前に何かがきっかけで病院に入院していたようですが、見た感じ怪我とかが原因ではなさそうです。入学初日にしていわゆるスクールカーストの底辺に決定し、友達が一人もいない高校生活が始まります。
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そんなチャーリーですが、技術の授業で一緒の3年生のパトリック(エズラ・ミラー)に思い切ってアメフト試合の観戦中に声をかけます。そこにサム(エマ・ワトソン)が現れ、チャーリーはサムに一目惚れするのでした。
冒頭は何かをこじらせている思春期の男の子の初恋の物語かな?と思って観ているんですが、チャーリーはなぜ入院していたのか、なぜ存在がぼんやりしているのか、たまに幻覚が見えるというのもなんとなくの映像で、チャーリーの幻覚なのか、ただの思い出の映像なのかの区別がわからない。とにかくチャーリーの存在と頭の中の表現がぼんやりしています。
チャーリーよりも周りの友達が抱える問題のほうがはっきりと浮き彫りになるので、彼の問題はぼんやりしたままストーリーは進んでいくのですが、最後の最後で抱えている問題が初めて浮き彫りにされます。
そこでやっと開放され、救われていく(と思う)チャーリーの存在そのものの表現が素晴らしいんですね。
チャーリーもよくわかってないんです。なんで自分は幻覚を見るんだろう。なんで一人でいても平気なんだろう。他人とふれあいたいけど、見えない壁があってなんだかうすらぼんやりしている。サムと出会うことによって少しずつ何かがはっきりしてきますが、やっぱりまだ何かがあるみたい。自分でもよくわからないなぁ。なんなんだろう、この感じ。
原作者が監督をしなければこういった表現を可視化することは難しかったんじゃないかと思います。
物語の9割くらいまでは、ちょっとからだがムズムズするような思春期こじらせ映画でなんだか観ていて恥ずかしいなぁ、なんて思っていると最後の最後で急にガツーンと来ますから。
「あなただから言える秘密のこと」みたいなのがガツーンと来ますから。
わたくしみたいにナメてかかると後で痛い目に遭いますから。
でもナメてかかった方がこの衝撃もすごいので、とりあえずナメてかかって観てみてください。
青春映画というよりも共依存の映画と言った方がいいかもしれないこの映画。
なるほど、原作は学校の授業でも使われるし禁書にもなったりするわけです。
「ウォールフラワー」
【監督】スティーブン・チョボスキー
11月 TOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラスト渋谷他、順次公開