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世の中に当たり前に存在する「名前」という存在。
私の名前は「くしBK」であり、みんなこぞって私のことは「くしBKさん」「BKさん」という風に呼んでくれている。そう、何を隠そう私は「くしBK」という名前であり、みなにとってはこの「くしBK」という名前以外に、私の呼び名は存在していないようなのだ。

しか〜し・・・実はこの「くしBK」という名前にも最終ギリギリまで、「どちらの名前にしようか?」と、頭を悩ませてくれた名前があったのだ(ここでは公表は差し控えるが・・・)。そしてそして、意外なことにそういった事例は世の中にたくさんありにありまくったので、ここで紹介しようと思う。・・・ていう、かかなり多いのでシリーズでご紹介。

題して、「この名前だったら嫌だったかも・・・とっても意外な名前の最終選考ボツネーム(モノ編)」第一夜。


■「大江戸線」/「東京環状線【ゆめもぐら】」

【都知事の一言で名称が一転しちゃった・・・】
2000年12月に全面開通した都営地下鉄12号線。正式名称は「大江戸線」だが、決まるまでには、スッタモンダの経緯があった。「東京都交通局では1999年7月に名称の公募をし、8月に実施したところ3万1000通の応募があった。それを元に有職者からなる選考委員会で検討した結果、11月29日に、正式名称として“東京環状線”を選び、愛称として“ゆめもぐら”を推薦することに決まった。」と都庁詰記者。ところが、それに烈火の如く怒ったのが当時の石原慎太郎、東京都知事だった。12月3日の定例記者会見でその話出ると、「環状線というのは、座ったままでもグルグル同じ所を回ることを言うんだ。12号線は6の字状だからそうではない。前々から環状線じゃダメだと言っておいたのに、交通局が委員会をきっちりリードしなかったせいだ」とまくしたてた。さらに、「委員会の選考で上位になった大江戸線というのはいいじゃないか、メトロリンクでもいい」と代案をまで出した。結局慌てた交通局が選考委員に陳謝して、知事の出した案に変更することで12月15日に正式に決定した。

(2000年2月3日 週刊新潮)


■「機動戦士ガンダム」/「ガンボーイ」

【ロボットを入れろとスポンサーに言われ・・・、考案されたのが「ガンボーイ」】
今もなお多くのファンを抱えるアニメ「機動戦士ガンダム」。
この作品は、もともとは『十五少年漂流記』をベースにしたSFアニメを作る予定だった。当初はホワイトベースのみが活躍するだけの『フリーダム・ファイター』というタイトルのアニメだったが、それだけではスポンサーが納得をしなかったため、急きょロボットが足されることになったのである。

ガンダムの放送から1年前、ロボットを入れることが決まった時、富野監督によって「ガンボーイ・アプローチ」という企画メモが書かれた。そして、後に“銃を持ったロボットが登場する”という内容に話が進み、少年が主人公であるため『ガンボーイ』というタイトルに改名された。

その後、放送までの間に『ガンボイ』と『フリーダム・ファイター』の「ダム」を組み合わせて『ガンダム』という名前に解明し、これに落ち着いた。



■「OL(オフィス・レディ)」/「OG」(オフィス・ガール)」

【本当は7位だったのですが・・・】
事務職の女性会社員を指す言葉「OL」を世に出したのは、週刊誌「女性自身」(光文社)だった。
東京五輪のころまでは「BG」(ビジネスガール)と呼ばれていた。ところが五輪前年の1963(昭和38)年9月、NHKがこの言葉の使用を中止する。米兵などが使う俗語で「商売女」の意味があるという説明だった。
「女性自身」はさっそく新しい言葉を募り、11月に結果を明らかにしたのだ。「オフィス・レディ(略称O・L)が第1位」とうたったその記事によると、約3万通の投書があり、「オフィス・レディ」はトップの4256票を得たという。ところが――。  「実はOLは7位。私が強引に1位にしました」
当時の編集長、櫻井秀勲(ひでのり)さんが白状する。本当の1位は「オフィス・ガール」だったが、「職場の男性上司が『ウチの女の子』と呼ぶのに重なる『ガール』が気に入らなかった。高卒から短大、大卒と、いずれ女性の学歴も上がっていくのに合わなくなると思っていました」

「OL」に対して、朝日新聞に見える識者評は「いやみったらしい」(評論家・坂西志保)、「でれりとしていて、きびきびした感じがない」(作家・丸谷才一)と手厳しい。それでも70年代にはすっかり定着した。櫻井さんは、何より女性たち自身が気に入ったからだと推測する。「語感の明るさ、華やかさを直感したのでしょう」
 
(2011年10月1日 朝日新聞夕刊)


■「おっとっと」/「なんかな〜い」

【「小さな水族館」⇒「なんかな〜い」を経ての「おっとっと」】
昭和57年4月に発売され、今もなお愛され続ける森永製菓の大ヒット商品「おっとっと」。
開発当初は「小さな水族館」という仮称だった。その他に「なんかな〜い」など候補が挙がったが、「おっとっと」という商品名になった。

エビやイカ、タコなど海にまつわるものの形をしたスナック菓子を箱や袋に入れたロングセラー商品だ。ネーミングは最初は「小さな水族館」でほぼ決まっていたという。それが、なぜ「おっとっと」になったのか? 森永製菓広報・IR部の馬場里佳さんに尋ねると、さらに予想もしなかった幻の名前が明かされた。

発売は82年。新商品の開発は、健康ブームにも乗って「健康」「自然」をイメージさせるもの、という流れで進んだ。シーフード味に決定し、「それなら魚の形にしよう」となった。 商品名は「味も形も魚なので『小さな水族館』」と常識的な線で固まっていたが、仕事後の酒の席でも議論は続き、「製造ラインに流す1カ月前に急きょ、『なんかな〜い』に変更されたんです」(馬場さん)。

「なんかな〜い」ですか!? それでパッケージデザインが決まり、あとはラインに流すだけというとき、今の名前に再変更された。魚の幼児語「おとと」に、お酌されてあふれそうになると口をつく「おっ、とっとっ……」をかけ、「酒のサカナにもなるし」などとわいわい言いながら最終決定したと、社内の記録に残っているという。

(2008年12月13日 朝日新聞)


第二弾(第二夜)もこうご期待!!