突然だが筆者は現在31歳だ。時代から言えば、初めて映画を観たのはテレビで放送されていたものを観たのが初めてだったように思う。E.Tのデカ過ぎる目玉の大きさにギョッとしながら、恐る恐る映画を観ていた事をなんとなく覚えている。
みなさんはどうだろうか。筆者と同年代の人や、それ以外の年代の人たちでも、初めての映画体験はテレビだったという人は多いのではないだろうか?テレビに映る異世界に驚かされた記憶が、誰でも1つや2つはあるのではないだろうか?
今回そんなテレビであの時放送されていた映画にフューチャーした書籍が発売されている。タイトルは「トラウマ日曜洋画劇場」。
それまでゴジラしか観た事がなかった中学の少年が、名画座で観た「タクシードライバー」に衝撃を受け、タダで映画を鑑賞できるテレビの洋画劇場を観るために、昭和50年代になめるようにテレビ欄をチェックして過ごしたという、ライター・皿井垂さん作の洋画劇場愛を込めて執筆した一冊だ。
この本の面白いところは、やはり当時少年時代だった皿井さんの体験談だ。
一人でまだ映画を楽しんでいたあの時、当時の自分がどう思っていたか。現在のようにSNSで顔を知らない同士でも気軽に意見を交換し合える時代ではない。映画の思い入れはその当時の体験もより評価に影響する時代だったと思う。
例えば、ブルース・リー主演「ドラゴンへの道」の章では、『ブルース・リーの映画をテレビでやると、次の日の教室は大変だった。男子がどいつもこいつも「アチョー」と叫び、そこらじゅうで飛び蹴りをかましあうからだ。』などの記述がある。もちろんこれは昭和50年代の話だが、なんだか今の時代でも見られそうな風景である。
また、健気な家政婦アンジェラのエロスに家族もろとも翻弄されるお色気作品「青い体験」の章では、あの日知ってしまった大人の世界の衝撃を思い起こすに違いない。筆者はこの「青い体験」を観た事はない。なのに、修学旅行の日に放送されていた「氷の微笑」の事をついつい思い出してしまった。
「遊星からの物体X」の章では、グロ表現が苦手だったあの頃の苦い思い出が「ああ、そうだった・・・」と頭の中をよぎった。そう、あの時SF映画はトラウマだったのだ。
映画体験は、観たその年齢によって苦くも甘くも感じる可能性がある。「トラウマ日曜洋画劇場」からはそんな青春時代の甘酸っぱい映画体験思い出がぎっしりと詰まっているのだ。
ゆっくりできる年末にこそ、この本を片手に甘酸っぱいあの日の思い出に浸りながら映画を楽しんでみてはいかがだろうか?