1
若者の貧困問題が深刻だ。
先日放送のNHK「クローズアップ現代」は単身女性の貧困「ガールズプア」を特集。
単身女性の実に3分の1は、低いと言われる正社員の平均年収の半分にも満たない年125万円未満での生活を余儀なくされているという。番組では託児所がありシングルマザーの応募を歓迎している風俗業界の求人などについて紹介。現代社会の新たな課題が浮き彫りとなった。

女性だけに限らず、年齢を重ねていくとともに働き口はどんどん減っていく。終身雇用が崩壊し、年金も信用できない若年層にとって、将来には不安しかない。

将来への不安を高める種は、日常のなにげない風景にも隠れている。
コンビニエンスストアやスーパーに行くと、働き盛りであるはずの40代から自分の父親ほどの年齢の男性までが、学生やパートのおばちゃんと一緒にレジ打ちをしているのだ。
慣れない手つきや接客態度から、なんとなくその店の店長とかではないことはわかる。履歴書に貼ってきたであろう名札についた写真ではきっちりとスーツを着ていることもあり、それがまた哀愁を誘う。

例えば今現在まともな企業で正規雇用で働いているとしても、これから何が起こるかわからない。50代で同じくバイト暮らしをしている可能性も往々にしてあるのだ。

将来の不安を少しでも取り払いたい。コンビニで買い物をするたび、どんよりした気持ちになりたくない。50代になってバイトで生計を立てざるを得ない状況に立たされないためには、どうすればいいのか。また、実際にいまバイトをしている中高年の男性たちはどう思っているのか。
アルバイトをしている中高年男性にアンケートを行った。


◆副業としてアルバイトをしている場合もある
現在アルバイトをしている中高年の男性25人程度にアルバイト生活に至ったきっかけ、将来の不安や現在の生活で幸福に感じることなどについて伺った。

アルバイト生活に突入したきっかけのひとつは、前職からの離職だ。理由はリストラや病気による退職が主な理由。再就職を試みるも年齢的に難しく、失業給付が終了したのでアルバイトになだれ込む形となるようだ。

もうひとつは、一度も正規雇用としての就職はせず、学生時代からアルバイトを続けているパターン。彼らの学生時代にバブル景気が重なったこともあり、そのまま定職につかなかったようである。

そして、意外と多かったのが、「本業の足しにするため」という回答。生活費もあるが中には小遣い稼ぎのつもりで、副業的にアルバイトをしているという声もあった。


◆50代バイト男子から若者へのアドバイス
続いて、「過去に戻って自分にひとつだけアドバイスできるなら、いつに戻って何をアドバイスするか」について聞いてみた。
この質問を通じて、いま同じ境遇にある若者に対するアドバイスにもなるかと思う。



●小学校 : もっとしっかり勉強するように
●高校生頃 : 失職することのない公務員を目指しなさい。
●大学卒業前 : どんな形でも正社員になったほうが全然いいぞ。
●大学4年 : 中学校の教員が、本当に自分に向いているのかをよく考えろ。(40代で中学校教師を退職、現在は塾講師として勤務)
●大学時代 : 就活をしろ
●27歳 : 転職するな
●20代後半 : 早く個人事業を始めていれば良かった
●30歳 : 貯金をしておくように
●30歳過ぎ : 健康管理をしっかりすること。
●会社を辞める前 : 頼み込んででも残るように言う
●失業したとき : もっと我慢すべきだったかもと思う
●前職退職時 : あと3年我慢して勤めて早期退職金を貰ったらどうですか?




時系列順にしてみたので、自身の年齢のあたりを特に見ていただきたい。
学生はとにかく就職活動をしておくように、健康に気をつけながら貯金もするようにして、一度定職についたらちょっとやそっとで辞めてはいけない、ということだろうか。


◆結局、幸せなんて人それぞれ
先のアンケートには書かれていないが、過去の自分に言いたいことが「ない」と答えた人も複数名いた。つまり現状が楽しく、別に嫌々バイトをしているわけではないということだろう。
また、現在「幸福に感じること」を聞いてみた。そこには、「食事ができ、屋根の下で寝ることができること」とあった。幸せとは、求めれば求めるほど終わりがないが、その反面どこにでも転がっているものなのだ。

なんだか宗教臭い結びとなってしまったが、そんなわけで中高年でアルバイトをしている人は副業的にやっていたり、それでなくてもそれなりに楽しくやっていたりするので、そんなにビビらなくてもいい、ということでいいのだろうか。
ただ、先人の意見をまとめると、「そんなに将来が不安ならとりあえず謙虚に暮らしておけ」ということになってしまい、結局若者の消費は抑えられっぱなし、「○○離れ」が手を替え品を替えジャンルを増やしていくのである。

(Written by 笹川太志)