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テレビを観ていて、「なんかヘン」なCMに出会ったことはないだろうか。
理屈では、CMが“ヘン”になるはずがない。一流の企業が巨額といえる投資をして、多くの優秀なスタッフが綿密なマーケティングを行ったのち、ターゲットの心をグッと掴むようなキャッチや映像をもとに、伝えたいメッセージもきっちり織り込む。そしてそれを15秒から30秒に詰め込むのだから、CMは知識とセンスの結晶であるべきなのだ。

そこまでしたのにもかかわらず、多くのエンドユーザーから「なんかヘン」という評価を下されるCMはなぜか常に存在しつづける。

「なんかヘン」なCMができあがる可能性のひとつとして考えられるのが、「CMを作った人またはそのCMに関わる結構偉い方の人に、外国人がいる」パターンだ。外資系の企業に多く、日本人が持ち合わせていないセンスが炸裂し違和感を放つ。これを「外資系CM」と呼ぶこととする。

「外資系CM」のなかでもっともわかりやすいのが、「直輸入CM」だ。海外で放映されたCMのパッケージをそのまま日本人に置き換えて放送している。

マイクロソフトやAppleがこれにあたる。
 

ヘン、というほどでもないが、妙にたくさんしゃべるところやジェスチャーが日本人っぽくないこと、後ろの太った男性もどことなく中国系とか東アジア系アメリカ人にみえる。
このCMは、海外でもほぼ同じ内容のCMが放映されている。



「直輸入CM」の有名どころといえば、ラーメンズが「パソコン」と「マック」になってトークを繰り広げるCMや、「キクチモモコ。学生。です。」が登場しパソコンのフリーズに激怒するAppleのCMなどがある。


このようなタイプはともかく、その他のタイプは「外資系CM」であるかどうかはわからない。
しかし、これらには小さなヒントがいくつも隠されていて、なんとなくそれであることがわかるのである。

例えば、現在放映されている「VISAデビット」のCM。


赤ちゃんの加工、「出産」と「サービスの複合」を重ねる生々しさなど、言葉にできない違和感はあるが、もっともわかりやすいのは、キャスティングにクセがあることだ。
お父さんがイケメンすぎる。おそらくハーフか外国の方だろう。
多くの人が一般的な夫婦としてイメージするのが日本人同士である以上、言い方は悪いがこのお父さんのキャスティングは“ノイズ”になってしまう。
クレジットカード社会のアメリカを象徴して“VISA”の父親を外国人に、“現金”の奥さんを日本人に見立てた、ということかもしれないが、それならそれでもっと欧米人らしい人を起用するべきだ。

キャスティングにクセがある「外資系CM」として、最たる例がクリーナーソフト「ガンガンガン速.jp」だろう。


完全に海外のテレビショッピングなのだが、出てくるのは日本人。
先ほどとは違って、全員日本人にみえるのだが、表情やイントネーションなど、何かが違う。街ではすれ違わなさそうな感じがするのだ。
推測だが、おそらく撮影現場のスタッフが日本の文化圏で生活していない人なのではないか。制作の公用語が例えば英語だったとき、出演者も英語を話せたほうが良いと考えるだろう。そこでキャスティングにクセが出た。もしかしたら日本国内で撮影してないのではないか。そう考えるとうつりこんでいる家具もどこかアメリカらしい。缶の日本茶や慌てて買い揃えたような文庫本で“国内感”を出そうとしているところが、余計怪しく見えてしまうのだ。

この違和感がかえってCMそのものの印象を強くしているので、CMとしてこれはこれで効果的なのかもしれない。

「外資系CM」とは「はっきりわからないけどどこかオカシイ」という異次元感を楽しめるものだ。オカシイことにだけは気づくのに言葉にはできないもどかしさに悶絶するのも一興である。
たった15秒のCMに対して、その背景やメッセージなどいろいろなことを勘ぐりながら見れば、退屈なCM待ちの時間がきっと楽しくなるだろう。

(Written by 笹川太志)


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