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年に1度の勝海舟の顕彰イベント「勝海舟フォーラム」(主催・勝海舟顕彰会)が勝海舟の生誕地・墨田区で7月21日、海の日に行われた。朝早くからウォークラリー、勝海舟銅像の顕花式が行われ、メイン会場のすみだリバーサイドホールには歴史関係者、ファン、ご子孫、一般客含め総勢600人が集まった。今年は映画「幕末高校生」を制作した李監督と勝海舟の玄孫・高山みな子氏との対談が特別プログラムとして用意された。
 
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基調講演の今年のテーマは「江戸城無血開城、命の大切さ」。高山みな子氏が海舟に
とっての江戸城無血開城を語った。海舟は自身の渡米経験により、幕府側でありながら、
日本国民であることの意識が高く、根回しの達人でもあった。西郷隆盛への書簡で「和宮様の命の保証はできない」と綴ったことや、江戸焦土作戦計画の協力を町火消しに交
渉し、その計画が西郷隆盛の耳に入るようにしたことなどを例にあげた。それにより日本の独立、日本人の命、日本の財産が守られてきた。また、幕臣への処分を寛大にすることで、技術や知識が明治時代に継承され、日本の近代化がスムーズに進んだのであると締めくくった。
勝海舟の子孫である高山みな子氏の口からの史実や意見は、どんな偉大な学者より
も説得力がある。

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基調講演に続き、映画「幕末高校生」のダイジェスト版上映のあと、高山氏と李監督との対談へと続く。

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映画「幕末高校生」は、現代の高校生が幕末へタイムスリップし、まさに江戸城無血開城のシーンについて描かれている。この日は公開前の映画をもとに高山みな子氏が子孫としてのリアルな観点で李監督に制作者のこだわりを質問した。

勝海舟や江戸無血開城をとりあげた理由を李監督は「今あるものを守りながら(時代
を)かえていく」ところが今の時代にあっている。歴史の教科書にある史実。そこに至るまでのプロセスが大切。偉業をなしとげた勝海舟の青年期の苦悩や葛藤といった人間
として美しい部分を描きたかった。『あの人は特別だった』ではなく『実は今の自分たちとかわらなかったんじゃないか』と。特に若い人にみてもらいたい。」と話していた。
シーンの細部まで話は及んだ。高山氏は「勝海舟の好物はうなぎではなかったのか?
蕎麦屋にした理由が知りたい。」と率直な疑問をなげかけた。対して李監督は「粋なのは蕎麦。」「シーンとして長居をしない場所を選んだ。」高山氏はさらに食べ方についても触れた。李監督は西郷隆盛が江戸蕎麦を食べたという文献が見当たらなかったため、はじめて食べるかもしれないと佐藤浩市氏に指導したという。高山氏は「蕎麦の食べ方も最後の1本まで残さないという点がお行儀よいという印象を受けた」と。李監督は「時代を変える男たちが細部にこだわらなくてどうする?」という気概で食べ方にも気をつけた。勝海舟の妻・民子のキャラクター設定について、民子が海舟を皮肉るシーンは、正妻でありながら、妾の子供も一緒に育てあげた気丈さがよく表れていると共感し、印象に残っていることにも触れた。それに対し監督は「自身の女性の理想像をこめた。家の奥さんには信頼されたい。男性の映像制作者は作品に理想の女性像を入れることが多い。特に男性に見てほしいところ。」「けんかは信頼があるからできるもの」と海舟と民子のけんかには信頼関係があることに2人とも意見が一致した。

勝海舟の功績を広く伝承する「勝海舟フォーラム」。春から準備し、全員ボランティアスタッフによる大規模無料イベントも今年で11年目を迎えている。

セレモニーの冒頭で主催の勝海舟顕彰会の廣田会長は、若者が歴史に興味が薄い事実にふれ、勝海舟が映画の題材になったことを「坂本龍馬や西郷隆盛などに比べて勝海舟が
とりあげられることが少なかった。映画はいい機会である」と話していた。

映画には、当時の職業から現代に通ずるところがある。たとえば江戸の火消し。現在の消防団である。たとえば蕎麦屋。日本を代表する江戸グルメとして存続している。今もなお江戸の街並みと文化が根強く残っているのは、この江戸城無血開城の成果である。来賓のコメントで生誕地にたつ勝海舟の銅像の周りを向島消防団が清掃しているという話があった。勝海舟の銅像建立の意味と意思を継承していくことが残されたものの使命。今回の映画も新しい流れを生むだろう。
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(Written by フルタイム 佐藤正子)

■幕末高校生オフィシャルサイト http://www.bakumatsu-kokosei.jp/

Special Thanks:
■勝海舟を顕彰する会 http://www.katsu-kaisyu.net/
■勝海舟の会 http://katsukaisyu.com
■鎌倉谷戸の工房 http://www.katsukaishu.jp
■med!x/メディックス
■メイリンフォト
■企画室SEN_


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