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日本には約1万もの駅が存在する。その中で皆さんにぜひ知ってもらいたい駅を、ニッチー編集部が厳選して紹介するこの企画、今回は愛媛県の伊予鉄道「坊っちゃん列車」の知られざるエピソードと、道後温泉駅を取り上げる。

夏目漱石の代表作『坊っちゃん』に登場する列車を再現した平成版・坊っちゃん列車は、2001年10月にデビュー。いまや愛媛、松山の観光を代表する人気ぶりだが、デビュー当初はかなりの紆余曲折があったことを覚えている人は、もう少ないかもしれない。

新しい坊っちゃん列車は、地元のマスコミをはじめ全国ネットでも大きく取り上げられた。当時の中村時広・松山市長(現・愛媛県知事)が坊っちゃんの格好に扮し、マドンナの衣装を身にまとった女性も同乗するなど華々しいデビューを飾り、その将来は明るいかと思われた。

だが、1回の乗車につき大人1000円(1日乗車券込み)とが高額だったため、同じ区間での運賃が現在でも150円であることを考えると、市民はもちろん観光客からも「高い!」と次第に敬遠されるように。せっかくデビューした坊っちゃん列車だったが、ほとんど誰も乗っていない“閑古鳥が鳴く”、ほぼ空の状態で市内を寂しく走る様子がしょっちゅう見られた(※現在は1回の乗車は大人300円に値下げ)

また、デビューしてしばらく経った頃、坊っちゃん列車が脱線事故を起こした。場所は、南堀端から松山市駅に入る、ちょうど90度にカーブするところ。坊っちゃん列車はうまくカーブして曲がれずに車輪が脱線してしまい、さらに後続の路面電車も次々と身動きが取れなくなって立ち往生。この現場の近くにNHK松山放送局があったのは奇遇かもしれないが、坊っちゃん列車の脱線事故は瞬く間に全国ニュースとなってしまった。けが人が幸いにもいなかったのは、利用客が少なかったのも1つかと。

その坊っちゃん列車は、デビューから10年以上が経ち、運賃が値下げされたこともあって、休日はほぼ満席で走っていることも珍しくない。最初は1編成だったのがいつの間にか2編成、3編成・・・と増え、途中で坊っちゃん列車同士がすれ違うのも珍しくなくなった一方、マニア度・レア度が減ってしまったやや残念な側面も無きにしもあらず。

坊っちゃん列車の終着駅であり、出発駅でもある「道後温泉駅」は、レトロな駅舎であり、坊っちゃん列車に遭遇できるチャンスが最も多い駅でもある。行くたびに増えている坊っちゃん列車グッズを見ると、伊予鉄の商売気が見えてきてアレなのだが、この駅と坊っちゃん列車の組み合わせは松山きってのおすすめ撮影スポット。日本最古の名湯・道後温泉への玄関口と合わせ、坊っちゃん列車は(値下げされた今こそ)一度は乗ってみて損はない。
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坊っちゃん列車に乗ろう! | 伊予鉄道


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