「プロ経営者」の定義はいろいろあるようだが、今のところ、「他の会社で社長として実績を残し、その実績を買われて別の企業の社長に就任する経営者」といったところが、だいたいの共通認識ではないだろうか。
今年、話題となった「プロ経営者」としては、日本マクドナルドホールディングスからベネッセホールディングスに転じた原田泳幸氏、日本コカ・コーラの社長、会長を経て資生堂の社長となった魚谷雅彦氏、10月1日にサントリーホールディングス社長に就任したばかりのローソン前会長・新浪剛史氏などがすぐに思い浮かぶだろう。
さらに少しさかのぼれば、日産自動車の社長であるカルロス・ゴーン氏も、元々はブラジル・ミシュランの社長やルノーの上級副社長として実績を残していた。
そのような中、人材開発コンサルティングを手がける株式会社セルムが、9月に全国800人のビジネスパーソン(20代〜50代の男女)に「プロ経営者」に関する意識調査を行ったところ、「今、自分の会社にプロ経営者を起用することに賛成」という回答が69.9%、「今後、日本でプロ経営者が増えていくと思う」という回答が74.4%に達したという。
また、日経新聞が9月22日の朝刊で報じたところによると、「社長100人アンケート」の結果として、「トップの外部起用に2割が前向き」、「今後、日本企業でトップを外部から招く動きが増えると答えた社長は66.2%」となり、「国内有力企業でトップを社外から招く動きの広がる兆しがうかがえる結果になった」としている。
2つの調査結果を見ると、ビジネスパーソンや有力企業の社長の多くが、「プロ経営者」は増えていくものと受け入れているようだが、セルム調査では、67.8%が「新社長は、社内から起用される社長がのぞましい」と答えたり、日経新聞アンケートでは過半数が「自社での外部登用に慎重」となるなど、本音では、「プロ経営者」を手放しで評価しているということでもないようだ。
ここで冷静に考えると、内部登用のいわゆる「生え抜き」の社長が、果たして「プロ経営者」ではなく「アマチュア社長」なのか? といったら、当然そのようなことはないだろうし、そうであってはいけないだろう。
しかし、現実には経営者としての力量とは別の事情から、後継社長が決まってしまっている事例もないとはいえないだろう。そういった社長の中には、「プロ」というよりは「アマチュア」的な経営者も残念ながらいるかもしれない。
今後、日本企業における「プロ経営者」とは、「社内外からの起用・登用を問わず、十分な力量のある経営者」を指すようになっていくことを望むとともに、企業が安易に社外に人材を求めるのではなく、今、社内にいる人材をしっかりと育成・開発していくことを願ってやまない。