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厚生労働省の調査によると、65歳以上で認知症とされる人は、2012年時点で約462万人に達し、その予備軍を含めると約800万人以上に上るとしている。これは65歳以上の高齢者の、実に4人に1人にあたる数字だ。それに伴い、認知症に対する周囲の人の無理解や偏見により生じるトラブルや事故も急増。認知症が原因で行方不明になる徘徊高齢者の対応も社会的な問題となっている。そんな社会背景を受け、現在、厚生労働省とNPO法人「地域ケア政策ネットワーク」が「認知症サポーターキャラバン」事業を実施。認知症について正しく理解し、認知症の患者やその家族を支援する「認知症サポーター」の養成を進めている。
 
そんな動きに、いち早く賛同したのが全国に調剤薬局を展開する日本調剤株式会社だ。一昨年に制定された「世界アルツハイマー月間」に当たる9月を皮切りに、社員を対象とした普及啓発活動「認知症サポーター養成講座」を実施している。全国に500拠点あるという直営薬局にて、高齢者や認知症患者と触れ合う機会も多いという同社。しかし今回は現場で活躍する薬剤師だけに留まらず、本・支社に所属する間接部門のスタッフまでを対象とし、年内には全国1000人規模の「認知症サポーター」を輩出する予定になっているという。その狙いについて、日本調剤広報部の櫻井琢也氏はこう語る。

「薬局の職員については、日常業務の中で高齢者や認知症の方々と触れ合う機会があるため、適切な対応が求められるのは当然のことですが、間接部門のスタッフも正しい知識を身に付け、その家族や知人と共有することで、地域社会の中でお役にたてることもあるだろうと考えました」(櫻井氏)
取材時点では、すでに2回の講座を実施済み。実際に参加をした櫻井氏は、このような所感を述べている。
「認知症の方ご自身が、以前のように上手くいかないということで歯がゆい思いをしているとか、周囲の方々に対して申し訳ないという気持ちを持っていることを初めて知りました。これは傍から見るだけ、資料や本の字面だけでは理解し得ないことです」(櫻井氏)
また、受講後のアンケートによれば、参加者の8割以上が「認知症に対する認識が変わった」と回答しているという。
「接し方や対応次第で、周囲の環境はもちろん、本人の症状も大きく変わっていきます。対応や見守り方の大切さを理解したという声が多かったですね」(櫻井氏)
企業ぐるみで1000人規模の「認知症サポーター」を輩出。地域社会へ浸透させようとする日本調剤のこの試みは、社会に対して大きなインパクトと“きっかけ”を与えるものだ。この機会に私たちも、認知症を正しく理解し、高齢者や認知症患者に対して優しい社会づくりに参画したいものだ。

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