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 世界的なリゾートとして有名なプーケットは、世界的に有名な奇祭が催されることでも知られている。
 毎年9月から10月にかけての9日間、主に中華系の人たちは「ギンジェー」と呼ばれる菜食を実施。
 期間中は菜食メニューを用意した屋台が数多く現れ、工夫を凝らした品々が並ぶ。メニューの中には菜食寿司や菜食タコ焼き、といった日本食のベジタリアンメニューまで登場するほど、バリエーションに富んでいるのだ。

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 「ギンジェー」は体を清めることを目的とし、タイの各地で催されているが、プーケットの「ギンジェー」は他地域とは様子が異なる。
 中国式寺院でトランス状態になった者たちが、自分の頬に剣やナイフなどを刺し、串刺しになったそのままの姿で街を練り歩くのである。
 1本だけではなく数本刺す者、剣ではなく傘やパラソルといったものを刺す者、頬だけではなく舌の刺し貫いている者など、見るだけで失神してしまいそうなラインナップだ。ちなみに彼らは、トランス状態に入っているため痛みをまったく感じないと言う。
 私も剣を刺すところを実際に見たが、痛みを感じている様子はまったくなかった。
 さらに、トランス状態に入ってしまうと、その時のことはまったく覚えてないらしい。街中を練り歩いたあと、中国寺院に戻り、トランスを脱すると正常に戻れるようだ。
 これ以外にも、大量の炭火の上を素足で歩いたり、剣製のステップの梯子を上ったりと、危険な苦行が目の当たりで見られる。
 もともとこの儀式は200年前に始まったといわれており、東南アジアに住む中華系の人々の間で広まっている。
 ギンジェーの期間は、神として祀られている「九皇(キューオーン)大帝」が戻って来ると言われ、9つの神のいずれかが菜食のよって清められた人々の体に憑依し、トランス状態になるようだ。プーケットの街中は、この「九皇大帝」と書かれた黄色い旗が、そこかしこに掲げられている。
 串刺し者のパレードは街中で見られるが、炭火歩きや剣製ハシゴの苦行は、『ジュイトゥイ寺』『バーンネーウ寺』といった中国式寺院で催されている。
 
(Written by 西尾 康晴)