そこで、テレビ業界では日常的に使われるが、他業界ではあまり使われていないのではないかと思われる言葉を解説していく。現代のテレビマンは、面白く、かつ、誰も不快にならない放送内容を心がけて番組を制作している。今回はそんな「放送倫理」に関する業界用語を紹介したい。
「うちはコンプラきついから」
主にプロデューサークラスのテレビ局員が使う言葉。“うち”とはそのテレビ局のこと。
スタッフ達が面白いことを追求した結果、デリカシーの無い内容に発展してしまっていることに気付いた時、「面白いんだけど(もしくは、俺は好きなんだけど)、うちはコンプラきついからそれはいけない(放送出来ない)かな…」、などのように使う。
「あそこ(別のテレビ局を指して)ならいける(放送出来る)かもしれないけどね」などと続く場合もある。
「怒られる」
上に同じ意味。放送倫理的にアウト、ということ。
「さらにこれをこうしたら面白くない??」
「いやいや、それは怒られるって」
「あ、だよね…」
誰に怒られるのかは問題ではない。
「これ、やらせてないよね?」
これは褒め言葉。出来上がった映像を見て、「面白い!」という意味で使われる。
自然に撮れるとは思えないほど面白いので、念の為確認だけど「ヤラセ」てないよね?ということ。
「あとは上(○階)の問題」
やろうとしている内容が面白いことは皆が同意済み。しかし、放送倫理的に、またはその他の大人の事情的に放送しても良いのかどうかは、今いるメンバーでは判断出来ない、ということ。○階というのは、そのテレビ局の「編成局」や「営業局」があるフロアを指して使う。
まとめ
A「面白いね、ちなみにこれやらせてないよね?」。
B「いやいや、ガチですよ」
A「じゃあここはいいんだけど、こっちは厳しいかもね。うちコンプラきついから」
B「え?これ怒られます?」
A「まぁ大丈夫だとは思うんだけどね、あとは上の問題かな。確認しとくよ。」
こんな感じで、日々誰も傷つけること無く面白いものをつくろうと戦っているテレビマンは「デリカシーが無い」という身も蓋もない言葉を極力使わないために様々な表現を駆使して会話している。