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レンタルビデオ店の奥、大型店舗になるとフロア全体に広がる男の聖域AVコーナー。例のカーテンを抜けるとそこには紳士たちの空間が拡がっている。

紳士たちは真剣な眼差しで一夜を共に過ごすお相手を吟味する。パッケージという限られた情報からイメージを膨らませ、己の癖と合致するポイントを探し出しているのだ。この場所に集まる紳士たちを導く「AV調香師」という仕事が存在する。今日はそんなAV調香師という職業に迫ってみよう。

ここに集まる紳士たちには暗黙のルールがあることを覚えておこう。

まず、長い時間同じメーカーやジャンルの場所に留まってはいけない。パッケージと格闘するのも大事なことだが、多少の妥協と決断力も必要。そしてあなたが移動するのを近くで興味もない作品で時間を潰している人が必ずいるはず。この場所では譲り合いの精神を忘れてはならない。

また、大抵のお店は隔離された場所にあり、通り道が非常に狭いことが多い。お互いがすれ違う時は、可能な限り距離をとるのがルールである。「すみません」と一言そえるのも紳士力が高い。当たり前ことだが下にジャージを履いてくるのも避けたいところだ。

稀に若者が彼女を連れて入ってくるというイレギュラーが発生する場合もある、その瞬間紳士たちの動きは騒がしくなる。この事態に新参の中には動揺を隠せず立ち去る者もいるが、古株の感情は一切ぶれることはない。真剣な視線の先にはAVのみ、左手には既に数枚の作品を握りしめている。

ここは紳士たちの空間、これら暗黙のルールを守らなければいけない。お互いが紳士協定によっての結ばれた争い事のない平和な世界、それがAVコーナーなのだ。

それでは本題となる「AV調香師」という仕事に迫ってみよう。

例のカーテンを抜けた瞬間、彼らの体から自然と解き放たれるモノがある。その人からにじみ出る男性特有の香りである。その香りはその日の体長や精神の状態によって微妙に変化する。そこから読み解ける情報は、今夜の一戦の方向性だ。よくある「今日は幼女モノで抜きたい気分」とかのアレである。

その香りから今日のあなたのベストなお相手までエスコート、コンシェルジュ的なことをしてくれるのが彼ら「AV調香師」のお仕事だ。ちなみにその姿は他の人からは見えない。本人専属の執事、ジョジョのスタンドのようにご主人様に付き添っている。

彼らの仕事はご主人様が放つ香りを読み解き、至高の作品に導くことである。
「本日ご主人様はお仕事でおつかれです、こちらで癒されてみてはいかがでしょうか?」
「だいぶ溜まっているようですね…今夜は濃厚なこちらのシリーズをオススメ致します」
…といった感じである。

彼らとの関係性も長くお付き合いをするほど強い絆が結ばれてくる。
「ロリモノですか…」
「素人モノは私も嗜んでおります」
「人妻緊縛モノはこちらの右上にございますよ!」
「ほぉーそういったご趣味がおありで…それならばこちらの企画モノはいかがでしょう?」
「プレステージの働くオンナシリーズでしたらこちらに」

「うるせーな…いいだろ別に///」

ご主人様の香りを嗅ぎ分けることはもちろん、彼らのAVに関する知識量は私達の想像をはるかに越えるそうだ。女優からプレイ内容まで幅広い専門知識で、ご主人様に最高のお相手を提供するプロフェッショナル、それが「AV調香師」という職業なのである。

彼らの最後の仕事は、ご主人様をベストなタイミングでレジにお通しすること。AVコーナーに集う紳士たちのラスボスは会計時の店員さんだったりする。

「ご主人様!今レジに向かえば趣味を共有できそうなオジサンでございます!」
「若い女性店員さんのお会計がお好みの場合はお申し付けください」

夢と希望を大きく膨らませながら帰路につく。
今夜は忙しくなりそうだ…

※「AV調香師」との契約に関しては、現在公式サイトがメンテナンス中のため確認ができていない。

(Written by 新潟の暴君(下半身的な意味で))