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日差しが強くなる春夏の季節に向けて、3月9日、紫外線が眼に与える影響について、眼と紫外線に関する研究の第一人者である金沢医科大学眼科学講座教授 佐々木洋氏が登壇、メディアに向けたセミナーを開催した。

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佐々木氏は、赤道近くで紫外線が強く、さらに住民は野外での活動が多く長時間紫外線にさらされているタンザニアで疫学調査を実施。それらによって得られたデータを発表した。

タンザニアは、中央アフリカの東部に位置し、インド洋に面する。佐々木氏が調査を行ったムクランガは旧首都のダル・エス・サラームの少し南に位置する村で、眼科やそれに準ずる薬剤も充分になく病院にかかる金銭的な余裕もない。

アフリカ人は視力が良いというイメージがあるとおり、タンザニアの18歳までの子どもたちのうち、90%以上が視力1.0を超えている。

しかし、強い紫外線を浴び続けていることで、タンザニアの成人は核白内障になる人が多く、それによって老眼の進行が早くなり結果、アフリカの成人は目が良いといえる人が多いとは言えないと結論づけている。

タンザニアの紫外線は日本(石川県)の約2倍の強さを持つ。さらに、タンザニアの村に多い家屋では構造上屋内でも紫外線を浴びる可能性が高いため、タンザニアの子どもの年間平均眼部紫外線総被ばく量(COUV)は、日本の子どもの3.3倍にもなるという。
 
日本とタンザニアの子どもの眼部紫外線総被ばく量の比較
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佐々木氏は、「紫外線蛍光撮影」を行い、紫外線が原因とされる眼疾患である「瞼裂斑(けんれつはん)」の有症率を調査。
瞼裂斑とは、白目の一部が黄色く濁って盛り上ってくる症状のことで、タンザニアでは、小学生の時点で94.3%の子どもから瞼裂斑が見つかっており、これは日本の小学生6.5%と比べ14.5倍もの数値である。
日本においても、屋外にいる時間が長い子どもほど瞼裂斑を発症しており、紫外線の被ばくと瞼裂斑による眼の障害との関連性が高いことがわかった。
子どもほど、眼にあたる紫外線の対策を行うべきだということになる。紫外線を防ぐ方法はサングラスなどがあるが、子どもに始終サングラスをつけさせるというのは現実的ではない。

また、サングラスやUVカットの眼鏡でも、レンズが小さいものやツルが細いものだと紫外線が入り込みやすいため注意したい。レンズと顔の隙間から入り込んだ紫外線が眼に吸収されてしまい、結果的に正面からの紫外線よりも影響が大きくなってしまう場合があるため、つばの広い帽子やUVをカットするアイウェアなどを併用することが重要だ。

コンタクトレンズでもUVをカットしてくれるものがあり、アキュビューR シリーズで知られるジョンソン・エンド・ジョンソンのコンタクトレンズは、紫外線B波(UV-B)なら97%以上、紫外線A波は、81%以上カット。(Johnson & Johnson VISION CARE INC.データより)。
黒目全体を覆うコンタクトレンズは、サングラスの形状によっては防ぎきれない紫外線もカットしてくれるので、より紫外線をシャットアウトしたいなら、コンタクトレンズもひとつの選択肢となるかもしれない。

(Photo by David Dennis