◆日本人の2人に1人がかかる「がん」
一昔前には「がん=死の病」というイメージが一般的でしたが、がん検診の普及や医療技術の進歩によって、早期発見と治療が可能になってきています。がんになっても安心して暮らせるように、以前と比べて制度は整い、治療法も症状にあわせてバリエーションが豊かになっていますが、それでも避けて通れないのは「仕事と治療の両立」という課題です。
◆もしもあなたががんになったら?そのとき何が起こるのか
致死率が下がっているとはいえ、命にかかわる病であることに変わりはないがんの治療。もしもあなたががんを患ってしまった場合、どうなるか考えたことはありますか?
まずは、手術や抗がん剤を用いた治療のために入院が必要になります。退院後も、再発を防ぐために通院が必要となる場合もあり、抗がん剤の副作用である強い吐き気やめまい、倦怠感と戦いながら仕事を続けることになります。この間、働く患者の3人に1人は退職を選び、その労働力損失は年間1.8兆円とも言われています。
◆仕事を続けながら、がんの治療をするという選択肢
世界一の長寿国である日本では、がん患者の3割が働き盛りの現役世代。その数は毎年20万人以上といわれます。
日本では、手術でがん細胞を取り除く「外科療法」、抗がん剤を投与する「化学療法」が一般的。それに加えて、部分的に放射線を照射し、がん細胞を破壊する「放射線療法」もポピュラーになりつつあります。欧米でのがん治療といえば「放射線療法」がまず候補になるそう。手術や抗がん剤は長期の入院を伴うため、仕事をもっている人は退職せざるをえないことが多くなります。仕事を続けながら、通院して治療を行う「放射線治療」はアメリカなど欧米諸国では、初期治療として一般的となっているとか。日本国内でも、症状や病院によっては健康保険が対象となる場合があり、1回あたりの治療時間は30分程と負担が軽いのが特徴です。東京都にある江戸川病院では、22時まで放射線治療を受けることができ、働きながら治療を続ける患者にやさしい取り組みが始まっています。
働き盛りの人にとって、がんを患ったことを職場でオープンにすることは勇気がいるといいます。「体調管理も仕事のうち」、「会社のために長時間働くことが社員の見本」という日本社会の考え方の悪いクセは、いまだに幅をきかせているからです。仕事をもっていない専業主婦にとっても、長期入院は子育てや経済的な問題を背負うことになります。誰にでも起こりうる病気だからこそ、日ごろから少しずつ知識をためておく必要がありそうですね。