「日本遺産」というものをご存知だろうか。「世界遺産」ではなく「日本遺産」というなんとも馴染みのない言葉だが、文化庁が地域の活性化を図ることを目的として、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として平成27年度から認定を始めているものだ。建物や街並みなどではなく、“ストーリー”が「日本遺産」に認定されているという点が少々ややこしいのだが、逆を言えば“ストーリー”を巡る旅ができるというのが「日本遺産」の面白さとも言える。
現在、全国で37件のストーリーが「日本遺産」に認定されているが、その中でも福島県郡山市・猪苗代町の認定ストーリーが目を引いた。郡山と聞くと、正直なところあまり歴史的なイメージがなく、どちらかと言うと東北の中では経済のまちというイメージであったが、経済の拠点となった背景に「大久保利通の“最期の夢”」が深く関わっているというのだ。
麗山の飛瀑
福島県には猪苗代湖という巨大な湖があるが、当時この猪苗代湖の水は郡山(安積地方)へは流れなかった。しかし、この猪苗代湖から郡山(安積地方)へ水路を引くという一大事業に“夢”を抱いたのが大久保利通なのである。大久保利通は事業案を明治政府へ提出し、明治維新後の武士の救済と近代化のための事業として、政府もこれを認めて予算を計上した。その後、大久保利通は志半ばで暗殺されてしまったが、彼の“最期の夢”を引き継いだ開拓者たちによって、「安積開拓・安積疏水開さく事業」は明治政府初の国営農業水利事業として成し遂げられたのだ。そして、猪苗代湖から引いたこの「一本の水路」が郡山市の米作を豊かにし、水力発電による新たな産業をもたらすなど、郡山市を急速に発展させる大きな礎となったという。
地域が発展した背景には、“夢”を抱いて実現することを諦めなかった挑戦者たちのストーリーがある。そんなストーリーの地を巡り、彼らの“夢”に思いを馳せる旅をするのはいかがだろうか。
この郡山市・猪苗代町の「日本遺産」認定ストーリーを知るなら、絶対に訪れてほしいスポットは郡山市内にある「開成館」と「麗山公園の飛瀑」だ。「開成館」は、この安積開拓の核である「福島県開拓掛」の事務所となった場所で、現在はこのストーリーにまつわる資料が展示されている。そして「麗山公園の飛瀑」は、安積疏水の通水を記念して造った滝で、当時の安積疏水の最終地点でもあった場所である。
日本遺産の地を巡るだけではなく、その土地ならではのご当地グルメを楽しむのも旅の醍醐味。郡山には、どこか懐かしいレトロなスイーツが沢山ある。
中でも、地元のパン屋や高校の売店などにも必ずと言っていいほどある“郡山のソウルフード”「クリームボックス」を是非食べて欲しい。基本的には練乳の入ったクリームが、厚めで正方形の食パンの上にたっぷり乗っている、そんなシンプルなパンだが、ほんのり甘くてどこか懐かしい味わいがする。クリームボックスを食べながらパン屋を巡る「郡山クリームボックス スタンプラリー」も開催されており、そのスタンプラリーの景品がクリームボックスがちょうど1つ入る大きさのクリームボックス型の箱というのも、ご当地感が溢れていてなんとも愛らしい。(※スタンプラリーの景品は数に限りがある)
この他にも、日本三大饅頭に選ばれている「柏屋」の「薄皮饅頭」や、その「柏屋」の開成店だけで食べられる絶品の焼き立て「窯出しチーズタルト」も食べてほしいスイーツの1つだ。
「柏屋 薄皮饅頭」
柏屋 開成店」だけで食べられる焼き立て「窯出しチーズタルト」
そして、お土産には「向山製作所の生キャラメル」が一押しだ。なんとこの美味しい生キャラメルを生み出した会社は、電子部品製造会社。元々は電子部品の従業員が生み出した「向山製作所の生キャラメル」は、今や地元の活性化に寄与するほどの大人気スイーツになっている。郡山駅1階の「郡山おみやげ館」内にある向山製作所のカフェでは、自分好みにアレンジして食べるオリジナル「クリームボックス」にこの生キャラメルのソースをたっぷりかけて食べられるメニューもあるので、是非試してみてほしい。
「向山製作所の生キャラメル」
向山製作所オリジナルのクリームボックスは郡山駅1階「郡山おみやげ館」内カフェ限定
東京駅から新幹線でたったの片道80分で行ける、日本遺産とレトロスイーツのまち郡山。この週末、小旅行に出掛けてみては?
■日本遺産/未来を拓いた「一本の水路」特設サイト
■郡山市開成館
■麗山公園の飛瀑
■郡山クリームボックス楽団
■柏屋
http://www.usukawa.co.jp/■向山製作所
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