2017年7月22日、楽天モバイルは、二子玉川にある楽天本社内で「家計の節約術セミナー」を開催した。家計を見直し、賢く節約する方法について、楽天モバイルが提供する格安SIMサービスの事例も交え、FP事務所アイプランニング代表のファイナンシャルプランナー・飯村久美氏と楽天株式会社楽天モバイル事業の石川雄一氏が紹介した。
 
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老後資金に不安を覚えている人は少なくないだろう。実際問題、現実は厳しい。総務省統計局「家計調査」によると、夫婦2人以上の高齢者世帯の場合、年金収入約21万円に対して支出が約27万円。約6万円の赤字となっている。65歳から仮に85歳まで生きるとして、6万円×12か月×20年=約1440万円が不足する計算だ。

老後に不安を抱えていながら、手をこまねいて年を取るのを待っているのは実にもったいない。なぜなら、適切な対策を講じることで、老後の不安を払拭できる可能性があるからだ。飯村氏のシミュレーションによると、たとえば現在35歳の人が65歳を迎えるまでに、老後資金の不足分約1440万円を貯蓄することは可能だという。ポイントは5つ。以下で詳しく見ていきたい。

■ポイント1:住居費

すでに住宅を購入している人のほとんどが住宅ローンを借りているはずだ。しかし、借りたまま放置しておくのはよろしくない。飯村氏によると、ローン残高が1000万円以上、10年以上残っていて、借り換えとの金利差が0.4%以上あれば、借り換えを検討すべきだという。

例を挙げてみよう。6年前に、固定金利3%、35年ローンで3000万円借りていた人が、某メガバンクで、金利1.5%で借り換えをした場合、月々の返済額が約11万6000円から約9万6000円へと減額となる。借り換えにかかる諸費用が約73万円だとしても、差し引き約610万円も得をする計算だ。

ローンの借り換えは面倒なイメージがあるが、この額は見過ごせない。また賃貸の場合も、URや特優賃、自治体の補助金制度を活用することで、ある程度支出を減らすことができる。住居費は支出の中に占める割合が大きいので、必ず見直しておきたい。

■ポイント2:生命保険

生命保険による支出も馬鹿にできない。重要なのは定期的な見直しだ。飯村氏によると、一度加入した保険を放ったままにしていたケースと、定期的に見直したケースでは、60歳までの総支払額で約700万円の差が出ることもあるという。

具体的に見ていこう。大事なのは、ライフステージごとに変化していく必要保障額に応じて保険を見直していくことだ。必要保障額とは、万が一のとき、遺族の生活を支えるのに必要となる資金のこと。独身時代は、親を扶養しているなどの場合を除いて不要だ。しかし、結婚や出産のたびにその額は増えていく。

一方、ライフステージがさらに進めばその額は逆に減っていく。たとえば、住宅を購入して団体信用生命保険に加入した場合や、子どもが独立した際は、生命保険の保険料を減らすことができるだろう。

なお、必要保障額のすべてを保険で賄う必要はない。遺族年金などの公的な保障もあるので、その分を差し引いた額を準備できるように資金計画を立てよう。

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■ポイント3:水道光熱費

続いては水道光熱費だ。1円単位の細かい節約はあまり効果が期待できなさそうだが甘く見てはいけない。ちりも積もれば山となり、年間約3万円の節約になるという。具体例を見てみよう。

・お風呂は間隔をあけずに入る 約5270円/年
・野菜はガスよりも電子レンジで下ごしらえする 約900円/年
・シャワーを流しっぱなしにしない 約2760円/年
・洗濯物は容量いっぱいのまとめ洗いをする 約3950円/年
・温水洗浄便座の蓋は閉めておく 約770円/年
※ 一般財団法人 省エネルギーセンター「家庭の省エネ大事典」参照

上記に挙げた例はほんの一部だ。年間3万円の節約を目指すにはほかにもたくさんの工夫が必要となる。インターネット上でも様々な例を見つけることができるので参考にしてみてほしい。

■ポイント4:医療費

高額療養費制度をご存知だろうか。これは「医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する」制度だ。入院した際などは心強い味方となる。

ただし注意が必要だ。仮に、高額療養費制度の限度額が8万円(8万円までは自身で負担し、超過分は補助してもらえる)としよう。7月25日から7月31日までの1週間入院した場合、自己負担は8万円で済む。しかし、7月28日から8月3日まで入院した場合は、同じ1週間でも、7月分の8万円と8月分の8万円を合わせた計16万円を自己負担しなくてはならない。入院する時期を調整するのは難しいが、可能であれば同月内で済ませたいところだ。

また、自宅近くの診療所をかかりつけ医とすることも節約につながる。大病院で初診を受ける場合、紹介状がないと1000〜5000円ほどの特別料金がかかるからだ。

確定申告の医療費控除も忘れたくない。受診料や病院までの交通費が対象となるので、領収書や通院履歴を管理しておこう。また、2017年より施行されたセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)により、薬局で購入した対象薬の費用についても控除を受けることができるようになった。

■ポイント5:通信費

 
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最後は通信費だ。2017年3月に実施された楽天モバイルの調査によると、一般的なスマホ利用料金は月額7880円ほどだという。20代から65歳まで使用し続けると仮定すると、単純計算で約360万円の支出となる。家族が増えれば増えた分だけ負担も増えることを考えれば、節約に値することは間違いない。

そこで検討したいのが格安スマホだ。たとえば楽天モバイルの3.1GBプランの場合、5分かけ放題のオプションを追加しても月額2450円しかかからない。一般的なスマホ利用料金と比べて5000円程度も節約できるのは魅力的だ。各社のプランにより条件は異なるため単純比較はできないが、料金重視のライト層には見過ごせないだろう。

また、楽天モバイルは「縛り」が緩い。大手キャリアの多くのプランが、2年縛りと2か月の無料解約期間の繰り返しであるのに対し、楽天モバイルは、1年縛りの後は無期限で無料解約が可能だ。無駄な出費のリスクが低いのもありがたい。

ただし、単純な料金比較は危険だ。たとえば、格安スマホは「ショップ」が少ない。楽天モバイルは42都道府県に約160の店舗(2017年7月22日現在)を展開しているが、2016年時点で全国約2400店舗を展開するドコモショップと比べると圧倒的に少ない。困ったとき、すぐに対面で相談できるショップが近場にないと不安だという人は注意したい。

なお、楽天モバイルでは、ショップの少なさをカバーするための「ご自宅出張申込(設定サポート付き)」を無料で展開している。契約希望者が対象のサービスのため契約後に利用することはできないが、初期設定は手伝ってほしいという人にとってはうれしいサービスだ。

以上が、現役引退までに老後資金を貯めるためのポイントだ。飯村氏によると、上記のポイントを押さえれば、「住居費(住宅ローン)2万円/月」「保険料6000円/月」「水道光熱費2000円/月」「医療費2000円/月」「通信費1万円/月(5000円×2人分)」を節約することも可能だという。35歳から65歳までの30年間継続すれば、その見直し効果は4万円×12か月×30年=約1440万円。85歳までの老後資金を見事カバーできる計算だ。
 
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将来の備えは現役のうち、早めの対策が肝心となる。5つの節約ポイントを参考に貯蓄計画を立て、豊かな老後を目指してほしい。