お年寄りや妊婦、身体が不自由な人が安心して移動する為の「優先席」。
女性が満員電車内でも痴漢やわいせつ行為の被害から回避するための「女性専用車両」。
日本の電車にはこうした配慮の効いたシステムが数多に渡り存在するが、これらはいつごろから導入され、国民の生活に溶け込むようになったのか。
という たわいもない疑問がふと生じたので今回は実際にリサーチしてみた。
優先席は今からちょうど45年前の「敬老の日」に設置された!最近では譲らない人の割合が多いことが問題に・・・?
「シルバーシート」は1973(昭和48)年9月15日の「敬老の日」に、当時の国鉄中央線快速と特別快速に初めて設置されたのが始まりだ。以後首都圏、京阪神の国電区間や大手私鉄まで広がっていったが、一部私鉄と東京都交通局では「優先席」と呼んでいた。
1990年代になって当時の京王帝都電鉄(現・京王電鉄)が「優先席」に呼称変更し、のちに1両当たり2カ所、16席の優先座席を設置して、交通弱者への対応に力を入れ始めた。
優先席の利用に対しては明瞭な法律があるわけではないので仮に座っている最中に高齢者などが目の前に現れたら必ずしも譲るという義務は生じないが、よほど傍若無人な人間でなければ自然と譲ろうとする意識が芽生えるものではないのかと思う。
近年でのアンケート調査で「席を譲るべき」と考える人が減少している傾向にあることも明らかになっている。
乗り換え案内「駅すぱあと」を運営する株式会社ヴァル研究所が2016年に実施した公共交通機関に関する意識調査の結果、電車などで高齢者・妊婦・障害者らに「席を譲るべき」と考える人が3年前の調査と比較して減少していた。
調査の結果、今回の調査で「あなたは優先席では席を譲るべきだと思いますか」の質問に、「はい(譲るべき)」と答えたのは全体で75.9%だった。「いいえ(譲るべきと思わない)」が8.6%、「どちらともいえない」が15.5%だった。
2013年の前回調査では「譲るべき」が93%で、3年前と比較して「譲るべき」と答えた人が17.1ポイント減少していた。
席を譲ろうとして断られたり、怪訝な顔をされたなど苦い経験があるなど、そういった出来事が起因して席を譲る意識が低下した人が増えたと推測されている。
参考:「東洋経済オンライン」2018年2月15日
女性専用車両は実は100年以上前から存在していた!
日本における女性専用車両は、1912年1月31日に当時の東京府の中央線で朝夕の通勤・通学ラッシュ時間帯に登場した「婦人専用電車」が最初とされている。この「婦人専用電車」は、男性と女性が一緒の車両に乗るのは好ましくないという当時の国民性を反映して導入されたものの、短期間で廃止された
その後は導入〜短期間での廃止を何度も繰り返した。
本格的に浸透したのは21世紀に突入してからのこと。
この頃になると、車内における迷惑行為や痴漢行為が社会問題と捉えられた。
まず京王電鉄が2001年3月に本格導入。
その後、国土交通省の「女性専用車両 路線拡大モデル調査」に協力する形で、2002年10月1日より、京阪電気鉄道と阪急電鉄がそれぞれ試験導入。
その試験導入中に、国土交通省が乗客にアンケートを実施した結果、女性が9割近く、男性も6割前後が女性専用車両に賛成と回答。
この結果を受けて翌2003年には近鉄、南海、阪神、西鉄といった関西以西の大手民鉄が女性専用車両を順次導入し、2005年5月には東京メトロなどの関東の大手民鉄にも普及するようになって今に至る。
参考:「日本民営鉄道協会」
Written by 佐藤