昨日、Ruby biz グランプリ実行委員会(事務局:島根県 商工労働部 産業振興課)が主催する、プログラム言語「Ruby」を活用したサービスや商品を表彰するグランプリ『Ruby biz Grand prix 2018』が、都内の帝国ホテルで行われた。
「Ruby」とは、島根県出身のまつもとゆきひろ氏が、1993年に開発したプロミング言語のこと。
企業はRubyを使った開発を行うことで、企業・社会が抱える課題に対して、柔軟かつスピーディーにアプローチすることができる。
1995年の一般公開以来、その使い勝手の良さ、開発生産性の高さなどから世界中のプログラマーに親しまれており、2012年には、国際プログラミング言語のなかで初の国際認証を得ている。
まさに、日本が世界に誇るプログラミング言語だ。
さて、今年で4回目の開催となる『Ruby biz Grandprix』は、IoT、ロボット、クラウドサービスなど、国内最先端のITサービスが集結。
過去最多の40事例がノミネートした。
【経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 課長 菊川人吾様】
各受賞者の発表に先立ち、島根県知事の溝口善兵衛氏、 経済産業省 商務情報政策局 情報産業課課長の菊川人吾氏が挨拶。
今後のRubyを活かしたサービスへの大きな期待、そして開発者らへ激励の言葉を贈った。
次に、昨年度の大賞受賞者である、Wovn Technologies株式会社CTOのジェフリー・サンドフォード氏が登壇。
昨年グランプリを受賞したことにより、Wovn Technologiesでは「世界中からRuby開発者の応募が増え、採用率がアップ。」
また、「収益に関しては月間で400%も成長した」と、グランプリの影響力の高さを明かした。
また、「収益に関しては月間で400%も成長した」と、グランプリの影響力の高さを明かした。
そんな業界が注目するグランプリに輝いたのは、株式会社「コークッキング」のフードシェアリングサービス【TABETE】と、「スタディプラス」株式会社の学習総合サイト 【Studyplus】。
【TABETE】は、フードロスの削減を目的として、まだ“おいしく”食べられるのに廃棄の危機にある食事を、手軽にレスキューできる社会派のWebプラットフォームだ。
閉店時間や賞味期限、最近話題のドタキャンなどの理由により、お店が捨てざるを得ない状況の食事を、ユーザーが「1品」から「おいしく」「お得に」購入することで、救い出すことができるというもの。
サービスの使い方は、飲食店が余ってしまいそうな料理の情報を【TABETE】に掲載。ユーザーがそれを見てサービス上で決済し、指定された時間にお店に行くと、その料理を購入できる。
審査委員長まつもとゆきひろ氏からトロフィーと賞状を授与されたコークッキングの榊原氏は、受賞者スピーチで、「日本のフードロスは年間646万トンと深刻な問題にもかかわらず、まだ認知度が低い。このサービスよって、フードロスの問題を広め、フードロス削減に向けたムーブメントを起こすために努めていきたい」と目標を語った。
また、Rubyを採用した理由について、「フードロスの問題解決という、日本でやるにはまだ手探りの部分が大きい社会的なサービスを開発するには、
迅速な開発力と柔軟な対応力がエンジニアに求められる。Rubyはそんな開発チームを実現するのにピッタリな言語だった」とコメントした。
【コークッキング榊原氏(右)】
一方の【Studyplus】は、学習の継続に対する課題解決を提供する“学習管理SNS”。
勉強をしたら、教材と進捗状況をスマホに登録することで、グラフで可視化。
学習記録の管理ができるという優れもの。
また、【Studyplus】のもう一つの大きな機能として、勉強仲間とのSNSでの交流がある。同じ目標を目指す者同士、SNSで励まし合うことで、モチベーションを維持できるのが大きな特徴だ。
スタディプラスCTOの島田氏は「現在、会員数は300万人を突破、総勉強時間は3億時間を超えた。ここまでの成長と開発のスピードを実現できたのは、Rubyなしでは考えられない。これからもRubyを使って学習者に欠かせないサービスを提供したい」と抱負を語った。
【スタディプラス島田氏】
次に<特別賞>の3社が発表され、株式会社オクト、株式会社グロービス、Supership株式会社が受賞した。
オクトは、建設業界に特化したクラウドサービス【ANDPAD(アンドパッド)】で受賞。建設業に従事する人のすべての仕事を一元管理する施工管理アプリで、現在契約社数は1300社と、業界シェアNo.1となっている。
『建設業界の「働く」を「幸せ」にするアプリ』と銘打つとおり、実際に【ANDPAD(アンドパッド)】を導入したある企業は、1日の業務時間を平均4時間も削減でき、社員の帰宅時間が早まったという大きな成果が得られている。
オクトの金近歩氏は、「CEOである兄と(二人三脚で)プログラムを書いてきた。Rubyを使うことで、家族の絆まで深めてくれた。」とRubyへの感謝を述べ、「これからも【ANDPAD(アンドパッド)】を通じて、建設業界の課題に真摯に向き合い、取り組んでいきたい」と今後の展望を語った。
【島根県知事溝口氏(左)オクト金近歩氏(右)】
グロービスの【グロービス学び放題】は、月額1980円という安さで、ビジネススキルを学ぶ動画教材を提供するサービスだ。
学校に行かなくても、スマホを使っていつでもどこでも、200以上のコースが“学び放題”というのが特徴で、大変好評だという。
グロービスの末永氏は、「サービス開始最初、エンジニアは私1人しかいなかったが、Rubyを使うことで、4か月でサービスをローンチすることができ、今では50名規模の開発組織へ急成長した。今後もRubyを主力技術として使っていき、その先にビジネスとしての社会価値の創造をしていきたい」と意気込んだ。
【グロービス末永氏(中央右)】
Supershipが提供する【ScaleOut】は、企業のマーケティング戦略を支える国内最大級のアドプラットフォーム。独自データを活用し、より効果的、効率的な広告運用を多様な広告フォーマットにて可能にするという。
Supership取締役CTO山崎氏は、「開発当時はいまほど言語も成熟していなく、アプリなども残念なものが多かった。Rubyの精度が良いので、人数をかけられない創業当時にひとりでも対応できた。生産性の高さにとても助けられた」と感謝し、「Rubyほどの柔軟性を持つ言語は他にない」と手放しで絶賛した。
【Supership山崎氏】
その他、 <Device Technology賞>にはSCSK九州株式会社、ユカイ工学株式会社。<Pricing Innovation賞>に株式会社コラビット、株式会社バンク、株式会社リブセンスがそれぞれ選出され、トロフィーと賞状が授与された。
最後に、Ruby開発者であり審査員長のまつもとゆきひろ氏が閉会の挨拶を行い、「【TABETE】は、社会的問題の解決に向けて努力していることを評価した。【Studyplus】は、私の知人が、高校生のお子さんに“お父さんのときは【Studyplus】はどんな風に使ってたの?”と聞かれたという話を聞き、社会的インパクトの大きさを実感した」と、グランプリの選考結果について説明した。
また、「年々応募数も増え、全体のレベルも上がっているので、審査は正直難航した。ノミネートしたサービスはもちろん、受賞者以外も優れたものがたくさんあり、審査員一同頭を悩ませた」と、グランプリの盛り上がりに喜びつつも、審査の苦悩を明かした。
さらに、「Rubyが皆さんに対して果たした役割もゼロではないが、最終的には皆さんがそのプロジェクトを完成させるまで努力したことが成果に繋がった」と、開発者の労をねぎらった。
【審査委員長 まつもとゆきひろ氏】
まつもと審査委員長も言及していたが、実はあのTwitterもRubyを使って発展したサービスだ。構想当初は「なにがいいの?」という目で見られたが、彼らがRubyを使って機能を追加していくなかで評判が高まり、今では社会インフラにまでなった。
今回の『Ruby biz Grand prix 』参加者の中から、将来、社会を、世界を大きく変えていくサービスが生まれるかも知れない。
【各受賞者とまつもとゆきひろ氏】