「温州ミカン・柑橘系ミカン」出荷量日本一の愛媛。その中心ブランド「西宇和みかん」

太陽の日差しを浴び、白く輝く青い海。それに向かうは、緑が青々と茂る山々。温暖な気候と美しい自然に囲まれ、農作物と向き合う日々。

内心では、そんな農業ライフに憧れつつも「儲からないから」「新規就農なんて無理に決まってる」との想いから、都会暮らしから離れられない人も多いだろう。だが、そんな概念を覆しつつあるのが、愛媛県西宇和エリアにあるみかん農家だ。

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国税庁が発表した平成28年度の民間給与実態統計調査によると、会社員の平均年収は422万円。そんななか、年収3500万円以上のみかん農家の方もいるという。なぜ、そこまで高い所得を得ることができるのか。

その理由のひとつは、愛媛県西宇和地区で作られている「西宇和みかん」のブランド化が進んでいることだ。

JAにしうわの農業振興部・農家支援課の河野晃範氏は、こう語る。

「昨今は『西宇和みかん』の認知度が上がっており、質の良いみかんの単価はどんどん上がっています。従来は、面積が広くて収穫量が多くないと稼げないという印象がありましたが、畑自体はさほど広くなくても、甘くて質の良いみかんを作れれば、収益を上げることは可能です。私が知る限り、年間収入3500万円以上の農家さんもいらっしゃいますね」

そもそも西宇和みかんとは何か。西宇和みかんとは、愛媛の最西端に位置する、八幡浜市、伊方市、西予市三瓶町をはじめとする西宇和地区で生産される、みかんの総称だ。

愛媛のみかんというと、美味しいみかんというイメージがあるが、その中核が実は西宇和エリア。太陽の光、海から反射する太陽光、段々畑の石垣から反射する太陽光、この「3つの太陽」から、みかんの木がたっぷりと光をあびることで西宇和みかんは美味しさを増す。

もともと西宇和エリアは、リアス式海岸が続く海岸部と、起伏のある傾斜地が多い内陸部が広がる、平地が少ない地形が特徴。本来は決して農耕向きの土地ではないが、その温暖な気候と日照量の豊富さから、みかん栽培には非常に適した環境となっている。恵まれた環境で作られた西宇和みかんは、全国のみかんの品質を競い合う2度の天皇杯受賞をはじめ、さまざまな賞を受けるなど、その品質の高さで知られる存在へと成長した。さらに「西宇和みかん」は平成30年度出荷から、品質を保証するマーク“Nマーク”の使用を開始。この統一マークは、西宇和という産地のブランドをアピールするだけでなく、JAの厳しい基準を満たした品質の証しになり、これを通して産地としての信頼をさらに高める役割がある。

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そして、西宇和みかんのなかでも、昨今脚光を浴びているのが「中晩柑(ちゅうばんかん)」だ。「中晩柑」とは、温州みかんを除く、1月から5月ごろまでに収穫される柑橘類のこと。かつては中晩柑といえば「はっさく」「あまなつ」などが主流だったが、近年は品種改良によって生み出された「せとか」「甘平」「紅まどんな」など種類も増えつつある。

これらみかんは、その繊細な味わいと高い糖度から、近年は注目度が上がりつつある。年間を通じて、様々な西宇和の柑橘類を扱うJAにしうわ流通センター・特産センター長である城徳貞文氏は、「西宇和には通年通していろんなみかんがありますが、甘平やせとかなど、糖度が高い中晩柑に関しては、贈答用としても人気が高いです。従来、即売所の主なお客様はこの周辺地域の方が多かったのですが、最近は遠方からわざわざ買いにいらっしゃる方もいますね。先日は関西の方から来た方がいて、驚きました」と語る。

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光センサーの導入で、糖度によって分類できるように

甘くて、見栄えよい。その品質の高さから、贈答用にも使われることが多い西宇和みかんだが、その品質の高さを担保するため、様々な工夫も行われている。

たとえば、西宇和内の中晩柑が集められ、仕分けされるJAにしうわの共選場では、内部を破壊せずに糖度や酸度、内部障害などの有無を検査できるセンサーを導入。このセンサーにより、それぞれのみかんは、色味や形、傷や黒点等の有無、糖度等によって分類されていく。

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JAにしうわの三崎柑橘共同選果部会・共選長の寺文人氏は、「市場的に甘味が高いほどに喜ばれる傾向がありますが、センサーを通せば、どの農家のみかんが甘くて、おいしいのかがすぐにわかる。そのため、甘いみかんを作れる農家に、需要が集まっています」と語る。

みかん自体に傷つけずとも、品質がわかる。そうした技術力の向上により、「たくさん作れば収益が上がる時代」から「品質の高いみかんを作れば収益が上がる時代」へと、みかんの市場は移行しつつある。結果、仮に耕地面積が少ない新規参入の農家であっても、甘くて質の良いみかんを作ることができれば、高収益を上げられるようになったということだ。

ブランド化により1個当たりの単価も上昇。結果、中晩柑の収穫量と品目数が日本一である愛媛県のみかん農家の高収益化が進んでいるというのだ。


新規参入農家へのサポートも手厚い

だが、せっかく中晩柑のブランド化が進み、高収益化できる農家は増える一方、懸念されるのが、作り手となる生産者農家の減少。西宇和のみかん農家では、全国の農家の例にもれず、深刻な人手不足が進んでいる。

西宇和では、この10年間では年間平均58戸のみかん農家が離農し続けている。さらに、平成26年度の時点で、農業人口のうち65%を占めるのが60歳以上の高齢者たち。5年後、10年後には、60歳以上の農業従事者の割合が80%を越えると想定され、後継者がいないことから荒廃していく畑も少なくない。

こうした生産者の高齢化への対策として、生産者側も「先祖代々守ってきたみかんの畑を後世に残したい」と、ほかの土地から来た新規農業参入者に、畑を貸したり、譲り渡したりするケースも増えているという。

「土地勘も農業経験のない人が、新規就農して稼げるのか」と不思議に思うところだが、前出の河野氏はその疑問をこう否定する。

「ほかの農作物の農業従事経験がある人からは、『みかん農家はほかの農作物よりも作業が楽だ』と言われることが多いです。その理由は、みかんは木の上に実をつけるので、腰を曲げなくとも収穫ができること。農作業のなかで一番大変なのは収穫ですが、みかんの収穫は体への負担が少ないので、農作業に慣れていない人でも、参入しやすいのではないかと思います。また、地域ごとに指導員がいるため、農業経験がない生産者に対しては、手厚い技術的なサポートを行っています。事実、首都圏でディーラーとして働いていたご夫婦が、就農2年目にして、年間売上1500万円を上げたという事例もあるほどです。そのご夫婦も『みかん農家って儲かるんですね!』と驚いていました」

ゼロから農家に参入するのはなかなか一般人にはハードルが高いが、JAにしうわでは「西宇和みかん支援隊」と呼ばれる、かんきつ農家になりたい人に向けた就農支援組織も発足。ここでは、短期間から参加できるアルバイトや研修生も募集している。主な募集はみかん収穫の農繁期となる8月から。農作業の種類や農家によって賃金は異なるが、日給は6000〜8000円前後。人によっては、月に30万円ほど稼いでいくという人もいる。

「年齢層は16〜74歳まで幅広い年代が参加しています。『将来はみかん農家をやりたい』という人もいれば、『仕事をしているけれども、趣味として農作業をしてみたい』というボランティアをしたいという人まで、参加の動機もさまざまですね」(河野氏)

1〜2か月間と期間が限定されているので、手軽に農業体験ができる。そのため、ゼロから農業に参入する準備期間として、参加する人も多い。実際、真穴地区では、アルバイトがきっかけで西宇和に魅了され、この地での就農を目指し、研修制度に参加した人も3名ほどいたという。


祖母や兄と一緒に農業を開始。20〜30代の若き生産者たち

一方、西宇和みかんのブランドを引継ぎたいと、20〜30代でみかん農家へと就農する若者たちもいる。

西宇和の三崎地区で、現在祖父母から引き継いだみかん農家を運営する眞田稜太さんもその一人だ。高校卒業後は、東京農業大学短期大学部へと進学。2年間農業の知識を学んだあと、20歳で地元へ戻ってきたという。

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「現在は、祖母と母と共にみかん農家を切り盛りしています。畑で栽培している中晩柑は、清見とデコポン、サンフルーツ、はるみの4種。愛媛県は地域柄、みかんの研究が非常に進んでいるので、祖母や指導員さんをはじめ、周囲の人からのアドバイスや地元農家の人の知恵を参考に、一生懸命作れば、おいしいものができる。いまは、いろいろと自分で試行錯誤して、みかんづくりをするのが楽しいです(笑)。いずれは、僕ら若者世代から、特選認定された清美オレンジを出したいなと思っています」

なかには、中晩柑にビジネスチャンスを見出して、Iターンする人もいる。国の職業支援を経験後、Iターンで西宇和の三崎エリアで新規就農を果たしたのが斉藤誠二さん(33歳)。20歳まで兵庫県で育ったのち、農業大学へと進学。その後、農業の道に進んだが、政府の募集した農作業支援活動を続けている最中に、働き先の農家から「うちの畑を貸すから、みかんを作らないか」と声をかけられたことで、念願のみかん農家の運営を始めることになった。

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「西宇和は海や大自然に囲まれた素晴らしい景色、そして人の温かさがすごく好きです。最初に、支援活動で住み始めた際に『あぁ、ここに住みたいな』と思う気持ちも強くなりました。一方で、非常に魅力を感じたのは中晩柑の可能性です。中晩柑はブランド価値も高いので単品でも人気がありますが、皮が厚いので、マーマレードやジュースなど加工にも向いています」

現在、斉藤さん自身はまだ生産しか手が出せていないが、いずれは商品加工にも挑戦してみたいとの夢を語る。

「大学卒業後、農業研修でアメリカに行った際、農業ビジネスには限りない可能性があることを知りました。みかんを使った商品加工やそれらを販売する道の駅の活性化など、先々の可能性はたくさんあります。現在の目標は、自分と同世代のサラリーマンたちが定年する30年後くらいまで、農業を続けること。農業は、やはり後世に何かを残すことができる仕事だと思うので、自分を一代目として、二代目、三代目に伝えられる土地や作物、製品、ビジネスモデルなどが生み出せる農地を作れればと思っています」


地元高校生も「みかん検定」「みかんタオル」で応援

そして、西宇和のみかんをもっと盛り上げようとする動きは、子供たちにも広がっている。八幡浜高校にある商業研究部「A★KIND(あきんど)」では、地元の産業であるみかんをPRするため、これまでにも数々のプロジェクトを実施してきた。今年で9回を迎える「みかん検定」が話題になるなど、地元のみかんPRに一役買っている。

「A★KIND」の顧問を務める山田哲司先生は、「まず、みかん検定を始めたのは、八幡浜周辺はブランドみかんが多いので、これらをうまく使って、八幡浜に観光客を集められればと思い、始めました。内容は『みかんの花の色は?』『みかんの苗を愛媛に持ってきた人は誰?』など、生物学的なものや歴史的な問題。後は、それぞれのみかんの品種を当てる食べ比べなども用意しています」と語る。

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現在でも、今治タオルを使って作った「みかんタオル」などのアイデアを出すほか、「地元のみかんを盛り上げよう」というマインドは、年々部員たちに受け継がれているという。

地域の全体で西宇和みかんを盛り上げている西宇和エリア。新規就農を考える人にとって、候補地のひとつになりそうだ。

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