言葉を話すことのできない赤ちゃんの体調の変化も、便を見ることで発見できることがある。赤ちゃんだけでなく、便はすべての人にとっての健康のバロメーターだ。もちろん、高齢者にとっても。
高齢者施設では、便秘による腸閉塞や下痢による脱水症状を防ぐため、入居者の方の排便管理が欠かせないという。管理方法は手書きで記録するというアナログスタイル。スタッフが便を目視で確認することもあるが、認知症の方などにおいては排便のタイミングを把握することすら難しい。こうした排便管理が多忙を極める介護現場の作業負担になっていることは想像に難くないが、それ以上に便の確認をする側もされる側も、精神的負担の大きい問題と言えるだろう。
9月、東京ビックサイトで行われた第46回国際福祉機器展で、こうした状況の打開が期待される技術が初お披露目された。高齢者施設での排便管理をAI技術でサポートするLIXILの「トイレからのお便り」(研究開発中)だ。
便座の裏に組み込んだイメージセンサーが便を認識する。この日のデモンストレーションでは、便の模型を便器に入れ、人が座ったと仮定してふたをすると1秒足らずで便の分類がモニターに表示された。
硬便から軟便まで、7段階に分類した国際指標の「ブリストルスケール」。この分類のうちどの形状に当てはまるか瞬時に識別し、モニターに映し出してくれる。
ステーションでは、入居者の情報を一元管理でき、便に何らかの異常があればアラートでお知らせしてくれる仕組みも。
現在の識別精度は80%ほど。また、センサー部分の汚れへの対処法など、課題を残しているという。2020年春頃には実際の高齢者施設での実証実験が予定されているとのことなので、さらなる技術向上に期待したい。
2007年に人口に占める65歳以上の比率が21%を超え、超高齢社会にある日本。今後さらに高齢化率は高くなることが予想されている。人間誰しも歳をとる。こうしたイノベーションはどんどん応援していきたいところだ。