カンロは2020年決算、2021年事業計画を2月10日(水)、オンライン記者会見にて発表。長期ビジョン実現に向けた2030年カンロ像やグローバル展開などについて言及された。

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冒頭では取締役常務執行役員 CFO 阿部氏が登壇。 2020年度のキャンディ市場や同社経営状況が報告された。新型コロナウイルスの影響を受け、カンロの主力製品である飴やグミ、錠菓は全カテゴリーが縮小。キャンディ市場全体では前年比10%の減少に至った。

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一方で2020年度のキャンディ販売金額市場シェアでは、同社の売上は昨年より1.2%増加しキャンディ業界においてトップシェアに新型コロナウイルスの影響を最小限に食い止めたと言えるだろう

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同社の出荷金額における前年比では、飴はCVSチャネルでの販売落ち込みを受け、前年比7.4%の減少となった。


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グミは2019年のライン増加が寄与し12%の増加に至った。ポケモンとコラボしたピュレグミが話題を集め、ピュレグミ・カンデミーナグミはプラス5%に。
グミは増収を果たしたものの、飴などの落ち込みで、2020年度売上は前年比7億1700万マイナスの233億2100万円。また売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益共にすべて減益に至った。


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続いて、執行役員経営企画本部長 松本氏が登壇。2021年度事業計画・重点施策が説明された。本年度は従来より取り組んでいた「ブランド基軸経営」「サステナブル経営」に「デジタルマーケティングの推進」を加えた3本を軸に展開していく。それぞれ消費者意識や価値観の変化に対応した施策を実施する。

ブランド基軸経営の深耕においては、新たな生活様式や心理に適応した商品開発に注力する。コロナ禍の不安から生じる「健康意識の高まり」、外出自粛や運動不足がもたらす「摂取カロリーへの関心」、在宅時間増加による「家庭内消費・コミュニケーション」をキーワードに推進していくという。


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昨年はオリゴ糖の持つ整腸作用でお腹の調子を整える効果が期待できる「おいしいオリゴトールキャンデー」を発売。今年は同製品の販売に一層注力すると共に、キャンディで健康や予防ができるように研究開発を進めていく。また新たにノンシュガーブランド室を設営。組織体系を整えた上で、コロナ禍により人気が高まりつつある「ノンシュガーブランド」にも積極的なプロモーションを行っていく。


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昨年11月より中国のキャンディメーカー「Amos社」と日本における総販売店契約を締結し、「4Dグミ」の輸入販売をスタート。今年2月からは、カンロ製品「色えんぴつキャンディ」と「金のミルク」の輸出販売を開始する。今後は中国専売商品の開発も進めていく。

松本氏は「中国は日本同様、醤油を料理に使う習慣があり、日本と比較的嗜好が近いこと、日本製品をリスペクトする傾向が高いという理由から初の海外本格進出国として選定した」と話す。


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サステナブル経営の深耕(経営基盤の強化)の取り組みの一つがSDGsへの対応だ。「糖の価値創造」「事業を通じた環境負荷削減」「食の安全・安心」「人権ダイバーシティの推進」「組織統治」の5つの領域を設定して展開していく。「事業を通じた環境負荷削減」への対策として、植物由来の資源を原料の一部に使用したバイオマスインキを今年発売商品から順次採用。「金のミルク」には不純物を徹底的に排除したリサイクル素材「MR-PETⓇ」を活用し、CO2や石油資源の使用量削減を目指す。

 
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また食品業界の課題である食品ロス削減への対応として「賞味期限」の延長を実施。2021年の食品廃棄物量約20tを削減目標とし、ハードキャンディの賞味期限を12ヶ月から24ヶ月に順次延長していく。

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デジタルマーケティングの推進(成長戦略)としては、デジタルを接点にダイレクトに得られた消費者の声を活かし、顧客体験価値の向上を目指す。今年度はECやコンタクトセンターを構築し、デジタルマーケティングの推進を図る。
VOC(消費者の声)を活かした一例が、ピュレグミのパッケージだ。従来品では切り口が鋭利になりやすかったが、今年の秋からは切っても丸みがあるデザインに改良する。

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最後に、代表取締役社長 三須氏が登壇。「Kanro Vision 2030」が発表された。“Sweeten the Future”をミッションステートメントに掲げ、2030 年に向けて機能性を軸とする商品開発を継続し、新たな市場の開拓と事業領域の拡大を目標とする。

また以下の3つの戦略に重点を置く。
<価値創造>
創業110 年の歴史と伝統に培われたキャンディへの情熱と、「素材」と「機能性」の追求で新たな価値を創造し、人々の健やかな生活に貢献する企業を目指す。

<ESG経営>
事業を通じて創造した価値によって社会課題の解決に取り組み、社会と共生し、社会から必要とされる企業、人々から選ばれる企業を目指す。

<事業領域の拡大>
 国内キャンディ事業をコアに、海外・デジタル・未来の市場を視野に入れた多角的事業展開で成長し続ける企業を目指す。

「当社の事業環境はコロナ禍で大きな影響を受けており、消費者の意識や価値観も激変している。先行き不透明で不確実性が高い今こそ、長期ビジョンミッションを策定し、皆様にお伝えすることが必要と考えた。2017年に策定した中期経営計画“New Kanro2021”は選択と集中によって、グミを成長エンジンとして3年連続で過去最高売上を達成したが、2020年はコロナ禍での市場縮小により成長は足踏みをしている。新たな生活様式に適した商品開発を行うことで、成長路線への復帰を目指したい」(三須社長)

在宅勤務の普及によるオフィス需要の縮小など、新たな生活様式が消費行動に影響を及ぼすとも言われるキャンディやグミ市場。コロナ収束の兆しがまだ見えない中、同社の取り組みがどのような効果を生むのか、注目が集まりそうだ。