IBDDAY

5月19日は、「IBD(炎症性腸疾患)を理解する日」、「世界IBDデー」です。
毎年5月19日は世界IBDデーとして世界各地で様々なイベントが開催されます。
クローン病・潰瘍性大腸炎と向き合う患者様や支援者の方が繋がり、IBDの啓発活動などが行われています。

5月19日の「IBDを理解する日」に先がけて開催された「炎症性腸疾患(IBD)メディアセミナー」にオンラインにて参加してきました。

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左上/仲瀬 裕志 様 札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 教授
右上/山田 貴代加 様 NPO法人IBDネットワーク
下段/河合 薫 様 健康社会学者(Ph.D.)


▼炎症性腸疾患(IBD)とは?
●炎症性腸疾患(IBD)は慢性あるいは寛解・再燃性の腸管の炎症性疾患を総称し,一般に潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の2疾患を指す。
●UCは大腸粘膜を直腸側から連続性におかし,しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症である。
●CDは非連続性に分布する全層性肉芽腫性炎症や瘻孔を特徴とする原因不明の慢性炎症性疾患である。

炎症性腸疾患は、腸管の粘膜に潰瘍ができる炎症性の疾患です。症状は、腹痛や下痢、下血などで、多くの場合は症状が軽快する「寛解」と悪化する「再燃」を繰り返し、患者様のQOL(生活の質)を低下させます。本疾患は、発症メカニズムが未だ解明されておらず、厚生労働大臣により「指定難病」に指定されています。 国内患者数は、潰瘍性大腸炎が約22万人、クローン病が約7万人で、近年、増加する傾向にあります。

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▼炎症性腸疾患におけるいくつかの課題
根本治療がない
⇒”治癒”ということばが使えない。”寛解”という言葉を使う。

患者年齢の多くが20歳代、ときに小児
⇒就学、就労、結婚、出産などのライフイベント、経済的制約、誘惑。

慢性疾患で継続治療が必要
⇒調子のいい時にも治療を受けないといけない。


▼一般の9割は、IBDがどんな病気か詳細を知らない
今回アッヴィは16〜69歳のIBD患者さん391人と一般の400人の計791人を対象に認知度調査を実施。
その中で「あなたは炎症性腸疾患(IBD)−潰瘍性大腸炎/クローン病を知っていますか?」
という質問には・・・

56.0%が「全く知らない」、
34.8%が「聞いたことはあるが、どんな病気かは全く知らない」と回答。
最も患者数の多い指定難病にもかかわらず、IBDの認知度の低さが明確になりました。

また、炎症性腸疾患(IBD)について「よく知っている」、「どんな病気かある程度知っている」、「聞いたことはあるが、どんな病気かは全く知らない」と回答した人を対象に、知っているIBDの症状や病態を12項目の選択肢と共に質問したところ・・・

最も多かった回答として「この中に知っていることは一つもない」が34.6%。
疾患についての理解は全項目で3割を下回る結果になりました。
正しく症状を理解している人が少ないことが分かり、IBDの認知度・理解度両方の低さが伺えました。

▼IBD患者さんが日常生活で困っていることのひとつ、「外見や見た目からは病気であることが分からず、理解を得られにくいこと」は、一般の認識と違いが

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IBD患者さんを対象に、日常生活で困っていることを尋ねたところ、「薬を飲んだり通院をし続けなければいけないこと」(50.8%)が最も多い結果となりました。一方、一般の方にIBDの症状を説明し、自分がIBDになったら困ると思う症状を尋ねたところ、1位が「痛みがつらいこと」(61.4%)となり、実際の患者さんとの認識に差異が見られました。
また、IBD患者さんは困っていることの4位に「外見や見た目からは病気であることが分からず、理解を得られにくいこと」を挙げましたが、一般の方の回答では11位とギャップがあり、見た目ではわからない症状が多いIBDの疾患理解の難しさが浮き彫りとなりました。
患者である山田 貴代加さん(以下山田さん)は、「発症当時は栄養剤のみで、みんなと一緒のお弁当が食べられず、クラスメイトからはなんで食べられないの?と言われ辛かったです」と若くして発症することと、そして見た目にはわからないゆえの苦労を語っていました。


しかし、現在の生活の満足度をより詳細に、健康、社会生活(仕事、学校、勉強など)、睡眠、収入、人間関係などの10項目毎に計り「ウェルビーイングスコア」として、一般の方とIBD患者さんを比較しました。その結果、睡眠、社会生活、意欲、収入、恋愛の5項目で、症状が落ち着いている「寛解期」のIBD患者さんのスコアが高い結果を示しました。

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※ウェルビーイングスコアとは
現在の生活の満足度を尋ねる本アンケート調査を実施・分析するにあたって、一般の方とIBD患者さんを対象に「心身共に健全な状態」を計測、数値化するためにアッヴィが独自に作成したものです。現在の生活における満足度について、1点を最低点、10点を最高点とした10点満点で計測します。評価対象は生活全体、また生活に関する10項目(健康、食生活、睡眠の質/時間、社会生活(仕事、学校、勉強など)、意欲(前向きな気持ち、やる気)、収入/経済状況、住まい、家庭/家族との関わり、恋愛、交友関係・人付き合い(家族や恋人以外))です。

「腹痛や辛い倦怠感を経験しているからこそ、痛みがない時には幸せを感じやすいんです」と山田さん。寛解期のIBD患者さんの生活満足度が一般よりも高いという調査結果から、適切な治療方法によってIBDの症状をコントロールすることが、心身共に健全な状態を示す”ウェルビーイングスコア”の向上につながり、前向きな気持ちを生み出し生活満足度の向上につながると考えられます。

▼患者さんの約30%が「社会は、IBDなど難病の患者さんに対し「優しい」と回答。
一般の方と患者さんの回答とギャップがあった。

社会のIBDなど難病に対する姿勢について、「IBDなど難病の患者さんに対し『優しい』社会だと思うか『冷たい』社会だと思うか」という質問では、患者さんの約30%が「優しい」と感じている一方、一般の人が「優しい」と感じる割合は1割弱という結果となりました。このギャップの背景には、一般の人が考える患者さんへの配慮は、特別なものと考えているのでは、ということ推測されます。しかし、患者さんの回答からは、疾患を理解しどういったサポートが必要か聞く、そういった少しの言葉掛けや気遣いでも「優しい」と感じているということが分かり、ここでギャップが生まれていると考えられています。「たくさんの方にIBDを知ってもらうと同時に、患者さんの方も社会との積極的な関わりを持つことも重要」と山田さんからもあった通り、お互いが分かりあう、歩み寄る社会になることで、患者さん、一般の方それぞれの「優しい」と感じるギャップを縮めることにつながるのではないでしょうか。



「患者会の仲間や親身になってくれる主治医との出会いが大きな転機となり、前向きな気持ちで生活ができています。まだまだ病気のことを隠して生活している人も多いのが現状です。ですが、いつでも再スタートできるようなチャンスがある世の中になってほしい
と思いますし、そのためにも少しでもたくさんの人に認知され、理解ある世の中になることを祈っています」と山田さんは語っていました。
一人ひとりがIBDを知ることが社会全体のIBDに対する理解につながり、さらにIBD患者さんが社会との積極的なかかわりを持ち、活躍することの後押しになると考えられます。