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潜在患者720万人「ワキの多汗症」とは?

過剰な発汗によって日常生活に支障をきたす「多汗症」。日本国内のワキの多汗症の潜在患者は約720万人とも言われている。

多汗症の中でも、周囲からの理解を得られにくいのが「原発性局所多汗症」だ。手のひら、ワキ、顔面、頭部など、局所的に原因不明で過剰な発汗が6カ月以上続く症状を指す。

当事者が自分の症状を打ち明けにくいことから「サイレント・ハンディキャップ」と呼ばれることもあるという。

6月7日、多汗症の症状や治療法についての正しい知識を広めるべく、科研製薬(東京都文京区)とNPO法人多汗症サポートグループの共催で「『ワキ汗・多汗症』疾患啓発プレスセミナー」が行われた。

生活の質に大きな影響をきたす「ワキ汗」

発汗は、ヒトの体温調節の役割を担う大切な生理現象だ。

しかし、体温調節のほかに、精神的緊張時に大量の発汗が起こるケースもある。中でも「原発性局所多汗症」は、局所的に大量の発汗が起こることで日常生活に支障をきたす疾患だ。手のひらの汗で電子機器が故障したり、衣類に汗ジミができたりすることで、生活の質が低下する傾向がみられる。

「NPO法人多汗症サポートグループ」の理事であり、自身も多汗症患者である高部大問氏は、治療以前は大量の発汗により、職業の選択や職場における業務の支障になっていた経験を振り返る。

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今回のセミナーに先駆けて行われた『ワキの多汗症に関する意識・実態調査』では、ワキの多汗症に特化した実態調査を実施。

ワキの大量発汗によって洋服に汗ジミができたり、発汗に伴うニオイが気になるなど、多汗症の症状が生活の質に大きく影響していることがわかった。

登壇した池袋西口ふくろう皮膚科クリニックの藤本智子院長によれば、病院の受診の目安としては、「汗の量」よりも「どれだけ日常生活において支障を感じているか」。

しかし、実際にはワキの過剰な発汗により日常生活における支障を感じていても、受診に至る割合は1割未満ときわめて少ない。

患者の意識調査では、4割以上が「周囲の理解を得られていない」「あまり理解を得られていない」と回答しており、相談や受診をせずに抱え込んでいるケースがあると推測できる。

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しかし、明るい兆しもある。

「最近は、少しずつではありますが、多汗症への理解が広がりつつあり、『多汗症を治療できる』ということが認知され始めています。悩んでいた患者が受診に至るケースが増加しています」(藤本院長)

受診増加の背景には、多汗症の治療の選択肢が増えたこと、ワキ用の塗り薬「外用抗コリン薬」が治療法として2020年に日本で承認・販売されたことがあるという。

また、治療薬の販売元である科研製薬では、多汗症で悩む人に向けた『ワキ汗治療ナビ』を公開。

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疾患や治療の選択肢についての理解を深めるために情報発信を積極的に行うほか、住んでいる地区の多汗症の治療可能を行っている病院の検索機能なども備わっている。

開設間もない2021年の年間の訪問者数は約40万人にのぼっており、関心の高さがうかがえる。

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「“汗らず”自分らしさを取り戻す」。

とは、藤本院長の言葉。

大量の発汗によって日常生活に支障をきたしている方は、受診することで自分の汗との付き合い方が見えてくるかもしれない。



■ワキ汗治療ナビ:https://wakiase-navi.jp/