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7月24日に放送されたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。頼朝が無くなり、いよいよ鎌倉を舞台に権力争いが激化するという面白い展開になってきている。その中で光っているのは金子大地さん演じる2代将軍源頼家だ。

この頼家、それはそれはクズ野郎なのである。
24日放送回では頼家が安達景盛の妻・ゆうにほれてしまい、景盛と、父の盛長を呼び出し「ゆうをわしにくれ」ととんでもない命令をする。「通りで見かけてほれてしまった」と言い放ち、到底納得できるような理由ではないことから景盛は「できません」と断る。父の盛長も「家を焼かれようが、例え首をはねられようが私の心は変わりません。父上(頼朝)を悲しませてはなりませぬ」と拒否する。頼家は激怒し2人を首をはねるように命じるが、そこに頼家の母である政子が現れて場を治めた。
頼朝も女性にだらしなかったこともあり、「父上は良くてなぜ私はダメなのか!」と頼家はクズ発言をする。

そこまで鎌倉時代が好きだったり詳しくない人でも、頼家とその後の3代将軍実朝に「名君」という印象を持っている人は少ないだろう。その原因となっているのが鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」である。

頼家は若くして亡くなっているため、その歴史的資料は数が少なく、大半の記録は吾妻鏡に書かれているもの。吾妻鏡そのものは鎌倉時代前期のことが記されている貴重な資料なのだが、これが作られたのは鎌倉時代中後期。その時権力を握っていた北条氏。もう100%北条氏の都合の良いように脚色されていると考えて間違いない。

北条氏は元々由緒ある血筋の家ではない。その北条氏が幕府の将軍にかわって政治を行う正当性を何かで示さなければならない。またドラマのネタバレになってしまうのですべては書かないが、頼家や実朝の今後にも北条氏は大きく影響を与えているため、見方を変えれば北条氏がクーデター、謀反を起こして実権を握ったと考えることもできる。
そうならないために利用したのが吾妻鏡ではないか。源氏から北条氏に実権が移った理由として「頼朝以降の将軍がめちゃくちゃな奴だったので、仕方が無く代わりを務めました!」としたかったのではないかと考える。本当に理不尽なダメ将軍であったかどうか、吾妻鏡だけで決めつけてしまうのは頼家がかわいそうである。

源頼家の人間性は、そのような想像を膨らませながら考えなければならない。今回の「鎌倉殿の13人」では今後どのような人物として描かれるのか。このままダメ2代目として嫌われ者になるのか、はたまた視聴者の心をグッと引きつけることになるのか、期待しながら視聴したいと思う。

(Written by もう一度大河ドラマで新選組がみたい大井川鉄朗)