日本三古湯の1つ、兵庫県・有馬温泉。現代も趣ある温泉街に、老舗の名旅館が点在しています。
その1つである旅館「陶泉 御所坊」は、有馬温泉最古の宿として知られます。昔から著名人を含む、数多くの宿泊客をもてなしてきました。
陶泉 御所坊の始まりは、1191年(建久2年)と伝わります。この年の日本の歴史を紐解くと、源頼朝が公文所を政所に改め、長野県の善光寺を再建した頃。つまり、鎌倉時代です。
この年、以前から温泉が湧出していた有馬温泉に宿泊できる場所、いわゆる宿坊が整備されたとされています。
特に、文豪で知られる谷崎潤一郎は有馬温泉を愛し、長編小説『猫と庄造と二人のをんな』で、この旅館が実名で登場します。
「そしたら又御所坊の二階にしようか。」「夏より今の方がええで。紅葉見て、温泉に這入って、ゆっくり晩の御飯を食べて……」(陶泉 御所坊の公式ホームページより)
この部屋には、実際に宿泊することも可能です。「-RAKU- 26番室 和洋特別室/風呂付」で、室内には谷崎関連の本、書、兵庫県三田市で焼いた「三田青磁」も展示されています。
和風でありながら洋風さも感じられる、まさに和洋折衷な世界であり、異国情緒あふれる旅館。ほかにも廊下などにも展示物が並び、まるで博物館のようです。
陶泉 御所坊にはほかに、有馬温泉ならではの「金泉」が湧き出る源泉かけ流しの大浴場が有名。男湯と女湯が背の低い柵と岩で区切られた半混浴、半露天スタイルの浴場です。
さらに、サロンでくつろぐひとときもおすすめ。有馬温泉で文豪気分、タイムトリップできる旅館と言えます。
陶泉 御所坊
https://goshoboh.com/
(Written by AS)