ヤンセンファーマは、治療と仕事の両立支援のための新プロジェクト「対話でつくろう サステナブル・ワークスタイリング」を発足した。10月3日(月)には都内にて報道陣向け発表会を実施。プロジェクト概要や取り組みの背景や目的、治療と仕事の両立支援に関するアンケート調査結果などが説明された。
日本では労働人口が減少する中、今後は高齢従業員や病気を抱えながら就業を希望する層が増加すると推測されている。厚生労働省が平成25年度に行った調査によると、治療と仕事の両立に関する研修については約7割の企業が「行なっていない」と回答。さらに独立行政法人 労働政策研究・研修機構が同年に実施した調査によると、正社員規模が大きくなるほど、治療と仕事の両立を希望する傾向にあると判明した。これらの結果から、治療と仕事の両立は、企業が取り組むべき課題の一つと考えられる。
プロジェクト発足に先立ち、同社はジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループの社員1310人を対象に、「治療と仕事の両立」に関する調査を実施。その結果、病気や障がいがある約6割の社員が上司にその事実を伝えていることがわかった。一方で、病気や障がいがある約 3 割 は仕事への影響について上司の理解を得ることが難しいと感じていることも判明。また周りの社員も一緒に働くことへの不安を感じていることも明らかとなった。
さらに、病気や障がいがある人に対し、治療と仕事の両立を図る上で取り組むべきことを尋ねたところ、「治療と仕事の両立を支援する社内のカルチャー醸成」「利用できる制度の周知」「上司や同僚との効果的なコミュニケーションの取り方」が上位 3 点として挙げられたという。
このような調査結果から、同社は上司と部下のコミュニケーションに課題解決のヒントがあると捉え、シミュレーションを用いたトレーニングを開発。模擬対話を通して、上司が治療と仕事の両立支援において果たす役割を学びながら、適切な職場環境の構築を目指す。關口修平代表取締役社長は「私たち製薬企業の本来のミッションは、患者さまに革新的な医薬品をご提供すること。ですが、患者さんが日常生活の中で直面されるさまざまな課題においても解決に寄与したいと考えています。『サステナブル・ワークスタイリング』の取り組みが、治療と仕事が両立できる環境の整備につながり、日本社会が直面する課題へのソリューションとなることを期待しています」と意気込んだ。
ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ統括産業医の岡原伸太郎氏は「自分の病気や障がいを第三者に伝えるのは決して簡単なことではありません。そのような時こそ誰かとつながることが大切であり、気軽に相談できる社内カルチャーの存在が重要となります。本プロジェクトは上司の役割を再認識し、当事者と共に働き方を考え、サポートするための枠組みを提供します。プロジェクト発足を機に、当グループ内に留まらず、他社とのコラボレーションなどを通じ、社外にも広く展開していければ」と話した。
記者発表会同日には職場コミュケーションを重視したトレーニングを体験するワークショップが実施。同社社員が参加し、「部下と一緒に考えず、寄り添わない上司」「過度に寄り添いすぎる上司」「部下の新たな働き方を一緒に考える上司」「治療と仕事の両立を目指す社員」など、あらかじめ設定された人物像になりきっての対話が披露された。
ヤンセンファーマは、今後も同様の社内ワークショップを年に4回程度開催。24年には約100社の企業・団体にこれらの知見を無償提供し、「サステナブル・ワークスタイリング」の輪を広げていくことを発表した。医薬品の提供を超えた、製薬企業の新たな取り組みに各方面から注目が集まるに違いない。