PXL_20231104_062457190

1954年に本多猪四郎監督らの手によって世に送り出された「ゴジラ」。その第一作から2016年、庵野秀明総監督、樋口真嗣監督の「シン・ゴジラ」まで、実写作品としては29作品が製作されてきた。国内ゴジラ映画30作品目となるのが山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」(マイナスワン)だ。


【あらすじ】
出兵していた敷島浩一(神木隆之介)は日本へ帰還するが、東京は焼け野原と化し、両親は亡くなっていた。人々が日々を懸命に生き抜いていく中、浩一は単身東京で暮らす大石典子(浜辺美波)に出会う。しかし、これから国を立て直そうとする人々を脅かすように、謎の巨大怪獣・ゴジラが現れる。戦後、焦土と化した日本に生きる人々に、ゴジラと抗う術は果たしてあるのか……。

〈h3〉これまでありそうで無かった!史上最弱の日本VSゴジラ
ゴジラのような怪獣映画の核となる部分は、人類の叡智の外側を生きる巨大な脅威に対して、どう戦いを挑み撃退していくかだと思う。今作の山崎ゴジラは、敗戦直後、軍隊も武器も全て失った日本がゴジラという驚異に向き合うかが描かれている。これまでどのゴジラ作品でもなかった、一番来てほしくないタイミングでゴジラがやって来るのだ。この史上最も弱っている、最弱の日本とゴジラがどう戦うのか、これはぜひ映画館の巨大スクリーンで見ていただきたい。

怪獣映画と思うなかれ!主役は人間ドラマだ!!!

ゴジラというタイトルを冠してはいるが、もうひとつの大きく太い軸は神木隆之介さん演じる敷島を中心とした人間ドラマだ。戦争で生き残った敷島と、荒廃した東京で生きる大石典子。戦後になっても消えないほど深い戦争による傷と向き合いながら、どう抗っていくのかという、ゴジラとは別に、苦しい人生にも立ち向かっていくという人間ドラマがある。

2016年に公開された「シン・ゴジラ」は、ゴジラシリーズとしては最大の国内興行収入となる82.5億円を記録した。筆者はどちらの作品も映画館で観たが、今回の「ゴジラ-1.0」はその興行収入を超えてしまうのではないかと感じている。その理由が人間ドラマ。「シン・ゴジラ」が名作であることは変わりないが、政府や官僚がゴジラと戦っていく色が強い作品で、登場人物たちに感情移入できるような家族愛や人間ドラマが薄かったように感じる。「ゴジラ-1.0」は怪獣映画ではあるが、市井の人々の生活やドラマがとても秀逸に描かれており、そこは「ALWAYS 三丁目の夕日」や「永遠の0」、「DESTINY 鎌倉ものがたり」といった名作を手掛けてきた山崎貴監督の手腕が遺憾なく発揮されていると感じる。

怪獣映画としても、人間ドラマとしても非常に見応えがある名作「ゴジラ-1.0」。年末年始の休みの時期に…なんて考えていたら、ブームの波に乗り遅れてしまうかもしれない!!!

(Written by 大井川鉄朗)