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巨大な口が特徴的な世界で2番目に大きな魚類「ウバザメ」。体長は最大12メートル、体重は最大6トンまで成長する。水面近くを巨大な口を開けて泳ぎながら、1時間に2000トンの海水をエラで濾過して動物プランクトンを食べる。よく背ビレを露出させて水面で「日光浴」する習性から、「Basking Shark」(ウバザメ)という名前が付けられた。世界中の海を回遊しながら行き来を繰り返すサメで、最近では英国の沿岸などで目撃情報が上がるが、実は今最もウバザメ熱が高まっているのがアイルランドなのである。
 
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アイルランドでウバザメが最も目撃されるのは、プランクトンが最も発生しやすい4月〜8月。過去20年間、アイルランド沿岸で最初に姿を見せた場所は、場所はウォーターフォード県、コーク県、ケリー県など、アイルランド南郡が大部分を占めている。特に最近はウバザメの出現率が好調であり、2023年にはシーズン中155件もの目撃情報があり、最も多くの大群はケリー州ベントリー付近に、約80匹のウバザメ軍団が出現したという。ケリー州ベントリーを拠点にディングル湾、ヨーロッパ最西端のブラスケット諸島を巡るボートツアーが大好評。特に水温が上昇する初夏の時期には、世界でも有数なウバザメ個体群を目撃することが出来ると注目を集めている。
 
アイルランドのウバザメ研究グループと、英国の海洋生物学協会の科学者たちの調査で、通常は単独で行動するウバザメが、夏の繁殖期に大きなサークルのような集団を作り、水中を旋回しながら配偶者を見つけることが判明した。調査チームは2016年から2021年にかけて、アイルランドのクレア州沖で水中カメラと空撮ドローンを使い、ウバザメがゆっくり旋回しながら泳ぐ19の旋回グループを撮影した。ドーナツ状にサークルを組むサメは成熟した雄と雌で、集団は6〜23匹のサメで構成されていた。お互いの後を追いかけながらゆっくり旋回、数分以内に他の個体と関係を持っていくという。ウバザメの求愛サークルは数日間、もしくは数時間で終わることもあり、高速で相手を探すサメのスピードデートと言われている。
 
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