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人間が2人以上集まれば、そこに優劣が生まれてしまうことはやむをえないことである。他人と比較し、ときにはその間に超えられない壁があることを感じる。しかし、それはなにも人間に限ったことではなく、普段なんとなく口にしているお菓子にも超えられない壁は存在する。

ビスケットとクッキー。多くの人がこれを別のものとして捉え、ともに日常的に使う機会があるお菓子の名称だが、はたしてビスケットとクッキーの違いを聞かれて明確に説明することができる人はどれくらいいるであろうか。ビスケットとクッキーに限らず、クラッカーやサブレ、乾パンなど、「小麦粉を焼いた堅い菓子」には多くの呼び名がある。

実はビスケットとクッキーの違いは、「不当景品類及び不当表示防止法」という法律によって区別されているものなのだ。
クッキーもビスケットもクラッカーも同じ「ビスケット類」という食品。「ビスケット類」はビスケット、クラッカー、カットパン、パイの4種類で、ビスケット以外の3種類は、調理法や原料の違いによって区別されている。例えばパイであれば、ビスケットにはないイーストを原料として使っており、小麦粉と油脂が交互に層状になった食品、といった具合だ。また、パイの条件を満たすものは「パフ」と表示してもよいといったように、同じ原料、調理法で別の呼び方を認める場合もある。
詳しくはインターネット上でも公開されている「A‐16 ビスケット類の表示に関する公正競争規約」に各食品の定義が載っているのだが、それを簡単すぎるくらいに簡略化し、余計なものまで加えてドラマの登場人物関係図っぽくしてみたのが上の画像だ。

ビスケット類における規約を広めることを目的のひとつとしている社団法人全国ビスケット協会に問い合わせてみたところ、ビスケットをクッキーと表示して販売することはできないが、逆にクッキーをビスケットと表示して販売するのは自由なのだとか。こんな決まりがあるのは、商品に「クッキー」の表示が許される条件として、大雑把に手作り風の外観であることと、糖分と脂肪分が全体の重量に40%以上であることが求められているためだ。

このようなビスケットとクッキーの使い分けがされているのは、実は日本だけ。アメリカではビスケットもクッキーも「クッキー」で、逆にイギリスでは全部「ビスケット」に統一されているのだという。
では、なぜ日本だけこのような決まりができたのか。海外からビスケットやクッキーがやってきた戦後ごろ、砂糖や小麦は統制されており、すべて配給制であった。そのころからクッキーはビスケットよりも高級であるというイメージが持たれるようになり、ビスケット類の多くが「クッキー」と表示されるようになり混乱していたのだとか。そこで、消費者にも事業者にも混乱をなくすために、ビスケット類に関する規約を作り、ビスケットに比べて高級なイメージをもたれていたクッキーに、現在のような表示条件をつけたのだという。

しかし、規約には登場しないビスケット類に入りそうなものがある。ハトやヒヨコの形でおなじみのサブレだ。サブレは通常は1:1である油脂と小麦の割合を、2:1にしたものを言うそうで、クッキーの一種となるのだとか。

ところで、カットパンとはなんだろうか。カットパンとして販売されているものとして、カニの形をしたパンや、ひとくちサイズのパンなどがでてきたのだが、あれらも「ビスケット類」に含まれるのだとしたら、ビスケットの世界は計り知れないものなのかもしれない。