天むす。
小振りに握ったおむすびの中に海老の天ぷらが入っているというシンプルながらも味わい深いこの料理は、今では名古屋メシとして全国に知られているものだ。
だがその発祥は、意外なことにお隣三重県の県庁所在地、津市だったのである。
天むすの誕生は昭和20年代、津市の小料理屋『千寿』が主人へのまかない料理として考案したのがその起源とされている。
天ぷら定食の店で、時間をかけず、ある材料で作れるものをと考えられたのがはじまりだ。
こうして出来た天むすを試しに食べてみたところ、これはいけるということで通常メニューに加えると、たちまち評判になっていった。
とまあ、ここまでならただの地方名物で終わりそうなものだったのだが、転機が訪れたのは今から約30年前、暖簾分けした店が名古屋に出来たことだった。
人の集まる名古屋で天むすは人気になり、その評判はどんどん広まっていくばかり。
もちろん、その人気に便乗して、自分こそが元祖だと主張する後追いの店も多く現れるのだが、千寿はやはり本家にて元祖、それに対してもどっしりと構えていた。
千寿の三代目、福田尚美さんはこう語る。
「多くの元祖を主張する店が出て来たのが、かえってよかったかもしれない。それによって、天むすの認知度が上がって、天むすが定着することが出来ました」
そんな店主の言葉には、自分たちが確かな物を作っている自信と、自らの分をわきまえた冷静さが同居している。
それは店構えにも現れていて、津市大門商店街にある『千寿』は、その言葉通り、元祖であるという事にもおごらず、小さな店構えのまま、知る人ぞ知る天むす専門店として残っている。
「天むすが広まってもそうでなくともウチはウチ。昔からのこの店のファンもいるし、変に大きくなるよりも今の味を保つ方が大切」
名古屋名物である天むすを、まるで巣立っていった子供のように見つめるその姿は天むすの母そのもの。
もちろんその味は自信の通りで、暖かみのある柔らかさは、人気になるのもうなずける。
おむすびであるから、持ち帰ってのしっとりとした味もさる事ながら、店内で食べる出来たての天むすは、エビ天の衣のさっくり感がまだ生きていて、少し違った食感になる。
有名になった天むすもいいが、こうした天むすの起源の素朴な味もまた、舌を楽しませてくれるだろう。
値段は天むす5個 650円
1個130円で5個以上から1個単位で追加可能。
店内で食べる場合に限り、+150円で赤だしみそ汁がつけられます。
千寿天むす
三重県津市大門9−7
TEL:059-228-6798
(Written by 青木鉄平)
こうして出来た天むすを試しに食べてみたところ、これはいけるということで通常メニューに加えると、たちまち評判になっていった。
とまあ、ここまでならただの地方名物で終わりそうなものだったのだが、転機が訪れたのは今から約30年前、暖簾分けした店が名古屋に出来たことだった。
人の集まる名古屋で天むすは人気になり、その評判はどんどん広まっていくばかり。
もちろん、その人気に便乗して、自分こそが元祖だと主張する後追いの店も多く現れるのだが、千寿はやはり本家にて元祖、それに対してもどっしりと構えていた。
千寿の三代目、福田尚美さんはこう語る。
「多くの元祖を主張する店が出て来たのが、かえってよかったかもしれない。それによって、天むすの認知度が上がって、天むすが定着することが出来ました」
そんな店主の言葉には、自分たちが確かな物を作っている自信と、自らの分をわきまえた冷静さが同居している。
それは店構えにも現れていて、津市大門商店街にある『千寿』は、その言葉通り、元祖であるという事にもおごらず、小さな店構えのまま、知る人ぞ知る天むす専門店として残っている。
「天むすが広まってもそうでなくともウチはウチ。昔からのこの店のファンもいるし、変に大きくなるよりも今の味を保つ方が大切」
名古屋名物である天むすを、まるで巣立っていった子供のように見つめるその姿は天むすの母そのもの。
もちろんその味は自信の通りで、暖かみのある柔らかさは、人気になるのもうなずける。
おむすびであるから、持ち帰ってのしっとりとした味もさる事ながら、店内で食べる出来たての天むすは、エビ天の衣のさっくり感がまだ生きていて、少し違った食感になる。
有名になった天むすもいいが、こうした天むすの起源の素朴な味もまた、舌を楽しませてくれるだろう。

1個130円で5個以上から1個単位で追加可能。
店内で食べる場合に限り、+150円で赤だしみそ汁がつけられます。
千寿天むす
三重県津市大門9−7
TEL:059-228-6798
(Written by 青木鉄平)